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スクールバッグにあらゆる教材を詰めこむと、パンパンに膨れ上がった。
本当は、僕だってみんなと同じように置き勉をしていきたい。だけど、そういうわけにもいかない理由がある。
「おー、王子か。今日もすごい騒がれようだったなぁ、お疲れさん」
顔をあげれば、担任の原先生が教室に顔をのぞかせていた。
黒い髪に切れ長の瞳、白衣をなびかせている先生は、今年で二十四歳になる新米教師だ。気だるげでゆるい空気感が、一部の女子には人気らしい。
「お前、なんで、そんなに荷物がパンパンなわけ? 帰宅部のくせに」
「教材は、全部持って帰るようにしているんです」
「はあ? もしかして、資料集とかも全部? お前ってそんなに勉強熱心だったっけ。放課後は、かわいい女の子とちゃらちゃら遊んでんじゃねーの?」
「失礼極まりないですね」
この人は、なぜ教師になれたのだろう。
仮にそう思っていたとしても、普通、口には出さないでしょ。
「遊んでいるかどうかはともかくとして。ぜんぶ持って帰らないと、面倒なことになるんですよ」
「面倒?」
「盗まれたりするんです」
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