間章その1 王子さまの知られざる苦悩

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 僕にとって、いつの間にか私物がなくなっているのは、割と日常茶飯事。  純粋だった昔は、あまりにも物を失くす自分のうっかりさにたびたび落ちこんでいたけれど、最近では、単に盗られているだけだとわかってきた。 「うわー……。お前、平然とすげーこと言うな。犯罪に遭ってるじゃん」 「まあ、あまり普通でないとは思います」 「訴えねーの?」 「もし、今まで以上の被害に遭ったら考えますが、過ぎたことはもう考えないようにしているので。逆恨みされても怖いですし」  訴えたら訴えたで、自分の罪を潔く認める人は少ない。 『たまたま拾っただけ』だとか、『これから職員室に届け出るところだった』とか、あらゆる言い訳をはじめるのが人間だ。そうなると、なぜか被害に遭ったこっちの方が悪者みたいになる。  原先生は黙りこんで僕を見つめた後、唐突に述べた。 「俺、ガキの頃は、お前みたいなイケメンに対して滅びろとしか思ってなかったなぁ」 「はぁ、そうですか」 「けどさ、イケメンすぎるっつーのも大変なんだな」  初めて、言われた。  今まで、『そんだけ顔が良ければ、人生ベリーイージーモードだろう』としか言われてこなかったから、呆気にとられた。  癪だけど、すこしだけ嬉しい。
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