間章その1 王子さまの知られざる苦悩

8/8

45人が本棚に入れています
本棚に追加
/198ページ
「……先生も、まぁまぁイケメンだと思いますけどね」 「うっせえわ。お前に言われると、嫌みにしか聞こえねーよ」  本当に思ったから言っただけなのに。やっぱり、理不尽だ。 「っつーかさ、本気で彼女でも作ってみたら解決するんじゃねーの? お前がチャラチャラしてるから、女子も夢を見るんだろ」  彼女……。  考えたこともなかった。  こんな調子で、そもそも、まともに女の子を好きになれるのかな。  首を傾げたら、ふと、僕のことよりも脱走した亀に夢中だった彼女の姿が頭をよぎった。  黒髪セミロングで、校則を遵守したスカート丈の真面目そうな一年生。  あんな風に、女の子から、どうでもよさそうな態度を取られたのは初めてだった。 「お? もしかして、すでに気になる子でもいたりすんの?」  これを、気になるというのかはわからない。  そもそも、名前すら教えてもらえなかったし。  だけど。  逃げ出されると追いかけたくなるのが、人間の心理というものだ。
/198ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加