第一章 恋とは一生縁がないのだろう

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 きらめく金の髪に、透き通るように白い肌。  色素の薄い瞳、筋の通った高い鼻、花びらのような唇、すらりと高い背丈。  なんて、かっこいい人なんだろう。  遠目に見ても、華やかな容貌だとわかる。 「はー、相変わらずのかっこよさだなぁ。ま、あたし個人としては、真ちゃんの方がタイプだけどね!」  まるで、絵本から飛び出てきた王子さまが、うちの高校に迷いこんでしまったようで驚いた。住まいはヨーロッパの立派なお城だと言われても鵜呑みにしそうだけど、うちの高校の制服を身につけているし、一生徒のようだ。  王子先輩(?)は上履きからローファーに履き替えると、わらわらと集まっている女子生徒たちに向きなおった。 「特に誰とも約束はしていなかったよね? みんな、嘘はいけないよ」 「「きゃー!!!!」」 「何度も言っているけれど、僕は誰か一人を特別にするつもりはないから」 「「きゃー!!!!」」 「じゃあ、また明日」 「「きゃー!!!!」」  彼が颯爽と昇降口から出ていくと、女子生徒たちは夢から醒めたかのような顔をして、用は済んだとばかりに散らばりはじめた。  …………なに、あれ。 「佳奈ったら、そんな白けた顔をしないの。あの光景は、もはやうちの高校の名物じゃん」 「えっ……。そうだったんだ」 「ウッソ! もしや、王子先輩のことをご存知でない!?」 「少なくとも、目にしたのは初めてだね」  きらびやかな容姿に、彼を取り巻くたくさんの女子生徒。あんなに目立つ人だったら、一度でもすれ違えば忘れない。
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