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先日はあれだけ盛大にキレちらかしたメガネくんだけど、決して、王子先輩自身を嫌っているわけではない。なによりも生物室の安寧が大事というだけだ。その証拠に、今でも隙あらば先輩を入部させようとしている。
今のところは、『時間をズラして裏口から来てもらう作戦』がうまくいっているおかげで、平和に過ごせているけれど。彼が生物部に入部したという噂が漏れたら、話が違ってくるかもしれない。
先輩も、先日の女子生徒押しかけ騒ぎを思い出したのか、なんともいえない顔つきをしている。
「いまのところは、仮部員のままで良いかな。本格的に入部したからといって、何かが変わるわけでもないでしょ?」
「仰る通り、何も変わらないかと」
「そんなことはない! 先輩が入部してくれさえすれば、やる気のない坂本くんを退部させることができる」
「メガネ、いまだにそんなことを企んでたの?」
それまで熱心にスマホの画面をのぞきこんでいたるりが、やっと会話に加わってきた。彼女は、最初のうちこそ王子先輩に興味を示していたものの、すでにどうでも良くなったらしい。さすがは長年、真ちゃん一筋の女。
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