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「はぁ。何を話すんですか?」
「んー、そうだね」
彼は彼で、私の塩対応に慣れてしまっている。
「そういえば聞いていなかったけど、羽鳥さんは、どうして生き物好きになったの?」
思いがけない質問に、固まってしまった。
『佳奈ちゃん。これから、かめきちに日光浴をさせてあげようね。甲羅を大きく健康に成長させるのに、大事なことなのさ』
耳の奥から、おばあちゃんの声が蘇ってきて、首を絞めつけられたように息が浅くなる。
「羽鳥さん……?」
先輩も、さすがに様子がおかしいと思ったのだろう。
怪訝そうにのぞきこまれて、とっさに顔をそむけてしまった。
「……別に。ただ、なんとなくですよ」
やっとのことで、そう返答するのが精一杯。
彼は、私を見つめてきたけれど、それ以上尋ねようとすることはなかった。
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