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中学生になってからは、自宅に一人で留守番することも多くなって、小学生の時よりはおばあちゃんの家にお世話になる機会が減ったけれど。
おばあちゃんと、かめきち。
二人と一匹で過ごすあの時間は、私にとってかけがえのないものだった。
本当に、本当に――大好きだったんだ。
あんなに慕っていた人をうしなって、悲しくなかったはずがない。
それなのに、私は泣けなかった。
そのせいで、親戚から、お父さんとお母さんが陰口をたたかれているとわかってさえも。
心は、ただ虚しいばかりで。
私の瞳は、干上がっていた。
『千代さんは、ずいぶんとあのお孫さんを気にかけていたみたいだけど……』
『冷たい子だねぇ』
昔から、るりや周りの子と比べて冷めている自覚はあったけれど、あの瞬間に徹底的に思い知らされた。
私には、人らしい感性がないのだと。
生まれてくる時に、お母さんの胎内に心を置き忘れてしまったんだ。
たまに、自分は人間のフリをしているだけの得体の知れない『別物』なんじゃないかって、恐ろしくなる。
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