45人が本棚に入れています
本棚に追加
/198ページ
身体中にまとわりついた汗の気持ち悪さで、目が覚めた。
朝から、嫌な夢を見たものだ。
おばあちゃんが亡くなってから、もう半年になる。かめきちの住処が、あの家から星燐高校の生物室に移って、それだけの日が経つということだ。
かめきちを高校の生物室で飼わせてもらえないかと、原先生に頼みこんだのも懐かしい記憶。当初は、私の家で引き取ろうとしたのだけれど、両親から却下されてしまったからとにかく必死だった。
『一生徒のペットを、学校で引き取るわけにはいかない』
最初は面倒そうな顔で追いはらわれたものの、どうしてもあきらめきれずに土下座をした。
そうしたら原先生は『はぁ……仕方ねぇな。あくまでも場所を貸すだけだぞ。誰にも迷惑をかけず、お前が責任をもって面倒を見ろよ』と渋々ながら了承してくれた。
後から、るりに聞いた話によれば、『大人しそうな羽鳥が、まさか土下座までするとは思わなかったからなぁ。あれには度肝を抜かれたわ。なんつーかさ、生徒がそこまで必死になってるのに、それすら叶えられない大人なんてみっともねーじゃん』と苦笑していたそうだ。
原先生は、生物に詳しいわけでも、愛着があるわけでもない。数ある部活の中でも生物部の顧問が一番楽そうだから、という身も蓋もない理由で生物部を選んだような人だ。
だけど、彼には感謝してもしきれないと思っている。
最初のコメントを投稿しよう!