第三章 恋とはどういうものですか?

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 わからないのなら、知っていそうな人に尋ねてみよう。  幸いにも、今の私には、恋愛の第一人者といえそうな人物とつながりがある。 「王子先輩。恋とは、どういうものなんでしょうか?」 「ぶふっっ」 「いきなり噴き出さないでくださいよ。かめきちがビックリするじゃないですか」 「いや……。今のは、羽鳥さんが悪くない?」  先輩は、なぜか不満そうな顔つきをした。  結局、今日のるりは始終上の空だったな。  お昼休みに、大好きな購買の肉まんをおごってあげても『味がしない……』とめそめそしていたし。恋がうまくいかないと、食べ物の味もわからなくなるのか。みんながそんな一大事を経験しているなんて、どうにも信じられない。 『ごめん! 辛気臭いオーラを振りまいちゃいそうだから、今日は、部活休むね』  挙句の果てには、生物部にも顔を出さずに帰っちゃうし……。  るりは、言ってしまえば不真面目な部員だけど、今まで休んだことはなかった。きっと原先生の噂の一件が、よほどショックだったんだ。 「どうして、いきなり恋がどうのと言いはじめたの?」  聴いていると落ち着く声で尋ねられたら、ありのままの気持ちがするりと口から出てきた。 「……私には、恋がわからないんです」
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