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「他人の気持ちなんて、わからなくて当然だと思うよ」
当然?
「それでも、一生懸命に寄り添おうとしている。羽鳥さんは、やさしい子だね」
息を、呑んだ。
彼が浮かべていた笑顔が、あまりにも輝いて見えたから。
今更のように『さっき、あの大きな手で頭を撫でられたんだ』と鮮明に理解して、頬がじわりと熱くなる。
「……っ。べ、べつに、お世辞を聞きたかったわけじゃないです。私は、純粋に、恋とはどういうものなのか聞きたかっただけで」
急激に襲ってきた恥ずかしさを隠すべく、早口でまくしたてたら。
彼は、そうだなぁと顎に手をあてて、思いのほか真剣に考えはじめた。
やがて、これだというようにうなずいて、唇をほころばせたんだ。
「たぶんだけど。恋は、きっと、もっとこの人のことを知りたい、近づきたいって願う気持ちなんじゃないかな。この人の特別になりたいって焦がれるような、抗いようのない気持ち」
胸が、どきりと高鳴る。
そう口にした彼が、とびきりやさしい顔をしていたから。
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