第三章 恋とはどういうものですか?

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「他人の気持ちなんて、わからなくて当然だと思うよ」  当然? 「それでも、一生懸命に寄り添おうとしている。羽鳥さんは、やさしい子だね」  息を、呑んだ。  彼が浮かべていた笑顔が、あまりにも輝いて見えたから。  今更のように『さっき、あの大きな手で頭を撫でられたんだ』と鮮明に理解して、頬がじわりと熱くなる。 「……っ。べ、べつに、お世辞を聞きたかったわけじゃないです。私は、純粋に、恋とはどういうものなのか聞きたかっただけで」  急激に襲ってきた恥ずかしさを隠すべく、早口でまくしたてたら。  彼は、そうだなぁと顎に手をあてて、思いのほか真剣に考えはじめた。  やがて、これだというようにうなずいて、唇をほころばせたんだ。 「たぶんだけど。恋は、きっと、もっとこの人のことを知りたい、近づきたいって願う気持ちなんじゃないかな。この人の特別になりたいって焦がれるような、抗いようのない気持ち」  胸が、どきりと高鳴る。  そう口にした彼が、とびきりやさしい顔をしていたから。
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