第三章 恋とはどういうものですか?

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「ふむ」 「……クソが。なんでよりにもよってアイツなんだよ、あのバカ女」  おーい。  教師としてどうかと思うような舌打ちと恨み言、ここまで思いっきり、聞こえちゃってますよ。 「あの。どこか行くんですか?」 「ちょっと、用事を思い出した。また適当に来るよ。じゃーな、羽鳥」  白衣を翻して、イラだたしげに去っていく。  すごい、絶大なる効果だ。  たまには嘘も方便だ、と思ってしまった。  るりが、千賀先輩に告白されたというところまでは事実。  だけど、彼になびきそうだという部分は、完全にでっちあげだ。  現実の彼女は『え? いやいや、あんな軽薄な人と付き合うわけないじゃん。ってゆーか、そもそもあたしは真ちゃんにしか興味ない』とブレる気配は微塵もなかった。後で先生から『羽鳥、ちょっと表に出やがれ。この前は、俺にさらっと嘘をついてくれたなぁ』とお説教される未来が見えるけど、そのぐらいは安いもの。  正直、ちょっと安心している。  今までは、るりの話を聞いているばかりだったから、わからなかったけど。今の様子を見ている限り、親友の恋は、ただひたすらに一方通行なものではないのかもしれない。  るりの悲しむ姿は、できる限り、見たくないもの。
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