第三章 恋とはどういうものですか?

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 逆に考えると、活動するための体温度を保てる環境――例えば、人間の飼育下では、冬眠をする必要がないということになる。 「本来の意味を考えると、飼育下では冬眠する必要がないんです。ただ、冬眠をさせないことが原因で、健康状態が悪くなるという説もあるみたいで……」  ぺらぺらと、普段は大人しい舌が、活発に動きだす。  先輩が、「へぇ」「そうなんだ」「うんうん」と、ほしいタイミングで相槌を挟んでくれるのが、とても心地よくて。 「色々な説があるようですが、うちのかめきちは、やっぱり冬眠させない方針です。この子は生まれてから一度も冬眠をしたことはないそうですし」  話しを締めくくった時、彼の瞳が、かめきちではなく私の顔に向けられていることに気がついた。  食い入るように、見つめられている。  あれ?  よく考えたら、先輩に対して、なにを語っているんだろう。メガネくんのように同じ生物オタク相手ならともかく、大抵の人にとってはどうでもいいような話を長々と……。  思い返すほど、恥ずかしさが募っていく。 「こんなに饒舌な羽鳥さん、初めて見た」 「ご、ごめんなさい! つ、つまらなかったですよね」
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