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先輩が、気遣うように背中をさすってくれるたび、身体中を満たしていた恐怖と焦りが消えていく。
まるで、魔法みたいだ。
「困ったな……傘、持ってきてないや。もう少ししたら、止むのかなぁ」
私を安心させるためだけに紡がれる言葉。
――どうしよう。
窓ガラスを叩きつけるような激しい雨が、次第に、カーテンのような雨に変わっていく。
さああっと。
世界を包みこむようなその音に、それまで、混乱しっぱなしだった頭も少しずつ冷やされて……。
――私、先輩に、抱きしめられてる?
それまでふやかされていた現実を鮮明に認識した瞬間、もう、ダメだった。
「っ! ご、ごめんなさいっ!」
「わっ!?」
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