第四章 ある寒い冬の日のこと

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 肌を震わせる、寒い風が吹きすさぶようになった十二月初旬。  事は、あまりにも唐突に起こった。  放課後になって、意気揚々と生物室に向かったまでは良かった。  だけど、私は、愛しのかめきちのケージの前で立ち尽くすことになる。 「佳奈? どうかしたの~?」  背後から声をかけてきたるりに、返答する余裕もなかった。  だって……かめきちが、まったく動いてくれないのだ。  餌をあげても。  頭をつついても、持ち上げてみても、だらりと伸びているばかり。  ぴくりとも、反応しない。  こんなの、まるで……。  足元から這いのぼってくる黒い霧のような不安に、息がつまる。 「愛しのかめきちが、どうかしたの~?」  るりが、近づいてくる。  お願いだよ、かめきち。  るりの前では、いつもみたいに元気に振舞って。
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