第四章 ある寒い冬の日のこと

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 るりが瞳を揺らがせながら、幽霊のように頼りない声で、そう告げた時。  私の心は、びくとも揺れ動かなかった。  目の前で、現実味もなく、脱力しているかめきちみたいに。 「かめきちが!?」 「ウソだろ! 坂本くんっ、そこをどいて!!」  王子先輩とメガネくんが、必死の形相でかめきちの生死をうかがっているのが、遠い世界の出来事のようだ。  巻き戻しをしたように、心が、あの春に舞い戻っていく。 『千代さんは、ずいぶんとあのお孫さんを気にかけていたみたいだけど……』 『冷たい子だねぇ』  ああ。  私は、また同じことを繰り返してしまうのかな。
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