第四章 ある寒い冬の日のこと

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 夢中で走ってたどりついたのは、屋上前の階段。  一度足を止めたら、どっと疲れが襲ってきて、電池が切れたように座りこんだ。  さっき、この手で、かめきちを土の中に埋めたんだ。  信じられないけれど、手に付着した砂埃が証明している。 「はぁ、はぁ」  遠くから、誰かの息を切らした声。 「……やっと、見つけた!」  階段下から響いてきたよく通る声に、この耳はいつの間にか馴染んでしまった。明らかにこちらへと向かって大きくなっていく足音に、顔を上げる気にもなれない。 「羽鳥さん」  無視を決めこんで膝に顔をうずめたら、王子先輩は私の隣へとやってきた。 「みんな、心配しているよ」
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