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「……ねぇ、覚えてる?」
彼女は悲痛な面持ちで、掴みどころのないその一言を口にした。
「何を?」
アレンはキョトンとした雰囲気で聞き返す。どうやら、本当に何も見当がつかないらしい。
「……これだけでわかってよ……。もう一緒に暮らして3年になるんだから……。」
「え……まさか……。」
彼女のあまりに切なげな口調に、アレンは動揺を隠せない口ぶりだ。どうやら、鈍感なアレンも気づいたらしい。
「……私がスマホ置いた場所……。」
ということだ。
「また、スマホ無くしたの!?今週4回目だよ……?」
心無い一言が思わずアレンの口をついた。
「そんな、呆れないでよー!あたしだってね、いつもここに置くって決めてるつもりなんだけど、それを忘れ適当に置いちゃうんだからー!」
強がってはいるものの涙混じりのその声。どうやらアレンは彼女を半泣きにさせてしまったらしい。さすがのアレンも良心の呵責を覚えたか、彼女のスマホ探しを手伝う。
「仕方ないなぁ、じゃあ、また電話かけて鳴らすよ?」
そういいながらアレンは、いつものように彼女のスマホに電話をかける。ところが……。
「……それ、ムリかも……。」
と彼女が口にする。
「なんで?」
アレンはリングバックトーンを聞きながら、彼女に聞き返す。
「最後に覚えている記憶は、充電切れで電源切れたことだから。」
「まーじーでー!?」
アレンの叫び声と同時に、通話先から電源断の応答メッセージが帰る。どうやら、今回ばかりは本当に人力で探さないといけないらしい。
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