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中学生になって、高校生になって……時間のあるたびにあたしはあのあぜ道に行き、鬼を呼んだ。でも返事がない。目をつぶっても、瞼の裏の模様は、模様のままだった。
あの事故で、死人が出なくてよかったねと近所の人は言ったものだが、あたしにとっては死者一名。鬼は、あの事故であたしをかばって死んでしまったのだ。
あたしはあぜ道に来るたび、泣いた。父が死んだ時でも、こんなに泣かなかったというのに。
うっとうしいと思った時もあったけど、イマジナリーフレンドの鬼は、6年も一緒にいて、あたしの中でとても大きな存在になっていたのだった。鬼とは、もう会えない。空虚な日々が、達也という初カレシと出会うまで何年も続いた。
「まあ、確かにあれは初恋だったわ。でも今は達也の方が500倍好き」
あたしは達也の反応が気になって、あわてて言った。彼は黙ったままだ。怒っただろうか。というか、今になってあたしのイタい妄想初恋話を持ち出すなんて、なんかあたし、やっちゃったかな。
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