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ある日、学童の帰り。どこまでも水田が続くあぜ道をひとりでとぼとぼ歩いていた時だった。太陽はもう西に傾いていて、夕焼けがとてもきれいだったのを覚えている。薄暗くて、景色が見えづらくなっていたことも。
『うしろ!』
そんな時、ふと、声がしたのだ。振り返った。誰もいない。
いなかったが
速いスピードで車が通りすぎた。気づかず少しでもよろけていたら、ひかれていたところだった。
『たくあっぶねえガキだ』
また、声がした。もしクラスにいたら絶対にいじわるそうな、男の子の声。でもどこか優しさの混じっている声。あたしはきょろきょろあたりを見回した。やっぱり、誰もいなかった。うっとりするほどの夕焼けと、夕日の光を浴びて金色に輝く水田がどこまでも続いているだけだった。
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