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『目をつぶれ』
声が命じた。言われるがまま、あたしは目をつぶった。
目をつぶった時に見える瞼の裏。黒や赤や紫の混じった模様が、一つの身体、顔、輪郭を作った。
その輪郭は人間ではなかった。頭に、二つの角が生えている。顔は赤く、唇からは鋭い牙が二本、むき出していた。服は、目もくらむような金と赤のシマシマ模様だった。
「今日から俺は、お前の心に住む」
「だ、れ」
その輪郭は、乾いた笑いをした。
「怖いだろう。俺はな。桃太郎によって、たったいま鬼ヶ島から追い出された鬼だ。依り代を失い魂だけとなって、時を超え空間を超えさまよっていたところ、ちょうど心にスキマのある人間がいるじゃねえか。依り代を見つけるまで邪魔するぜ」
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