初恋は、イマジナリィ・フレンド

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 桃太郎に出てくる鬼は、悪いことをしていた。だからあたしの意識の中の鬼もしょっちゅう 「俺は、悪い鬼だぜ」  ひひひと舌を出していた。  しかしこの悪い鬼というのは、悪い悪いというわりに、とても世話焼きだったように思う。  不器用だった私に、ずいぶん頭の中から注意した。 「おい、はさみってのは、ちいせい刀が二つあるようなもんだろ。手え切らねえようにしろ」 「お前、今日熱あるじゃねえか。学校休めよ」 「寝る前のはみがき忘れんな」  むかしむかしの鬼ヶ島から来た鬼だというのに、ずいぶんと現実的で、現代的で。あたしは鬼が何か言うたび、笑った。ギャップが面白かった。昔ながらの怖い鬼の姿で親みたいな口のききかた。そう、死んだ父の口調に似ている気がした。
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