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番外編 死に戻りBabyスピンオフ 上半身は『パンの勇者』、下半身は『最強魔王(仮)』~召喚時のアクシデントで2つに分かれてしまった俺の魂(オチ有り)下の巻 それいけ下半身
あれから2週間ほど経った。その間俺はこの物置の様な部屋に監禁状態だった。
誰にも呼ばれず、誰も会いに来ず、来るのは1日1回硬いパンと具の無いスープを運んでくる汚いボロボロの服を着た子供だけ。頭からケモノ耳が垂れており、首輪をしている……奴隷だろう。
ヨタヨタと怪我や栄養失調でもしていてちゃんと歩けないんだろうか?その奴隷の子供はドアを開ずに、部屋についている小窓から食い物を入れるだけだった。
そして遂に待ちに待った運命の時がやって来た。俺はいつもの様に奴隷の子供に、パンを分け与えていた。
んっ? どうやら誰か来たようだ。「早く戻りなさい」と言うと奴隷の子供はコクッと頷き、タッタッタッタッと走ってどこかへ行ってしまった。
しばらくすると カチッ ガチャッ
数人の兵士が偉そうに入って来た。
「おい、【クズスキル】の【ゴミ勇者】様! お前に仕事をくれてやる、出ろ! 今日はお前以外の有能な【勇者】様の【荷物持ち】として働かせてやる。ありがたく思え」
「今までただで飯を食わせてやったんだ。ちゃんとご奉仕して来いよ。ぎゃっはっはっ」
「おら! とっとと立って出ろや!」
ガンッ
しまいには俺を蹴って来た。
こいつらは勝手に召喚して、勝手に閉じ込めて置いて何を言っているんだ? 誰も謝罪しないのか。この国も……ダメだな。
「ああ、先生お久しぶりです。元気でしたか? 何処に居たんですか? ってか。はっはっはっ」
「先生! 今日は昔の様にご指導のほどよろしくお願いいします。なーんてな。ぎゃははははは」
はぁ、こいつらも随分楽しそうだな、こっちに来て更に付け上がる様になってしまったか。こいつらも……ダメだな。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
どうやら俺と【勇者様御一行】は、とある【ダンジョン】に向かうらしい。そこで【魔物】を倒し【レベルアップ】をするとの事。
俺が監禁されている間も数日前からこいつらはその【ダンジョン】で戦闘訓練をしていたらしい。
馬車に乘り数時間ほどかけて、【ダンジョン】に到着すると、こんなにも必要か? と言うくらいの大量の荷物を渡された。
「先生すいません、それを持って俺たちに付いて来てください。大人なんだからそれくらい余裕ですよね。くっくっくっ」
他の生徒達も笑いを必死に堪えている――どうせ荷物の中見はガラクタなんだろう。
「早く例の場所に行こうぜ!」
「おう! 先生、早く荷物を持ってください、置いていきますよ」
――俺を置いていくだと? そんなわけないだろ、俺が今日の主役なんだから。
そして【魔物】を倒しながら数時間ほど進むと(まあ途中【荷物ち】の俺に嫌がらせするように【魔物】を誘導してくる奴もいたが)
急にみんなが立ち止まった。どうやら目的地に着いたようだ。
「先生ここです。今日の目的地はここの崖の下、つまり奈落の底と呼ばれる場所の【魔物調査】です」
ほーう、てっきり【ボス部屋】で囮役でもやらされると思っていたがこっちの方だったか。
「先生1人でここから降りて奈落の底の【魔物調査】をして来てもらいます、凶悪な【魔物】や最強種の【ドラゴン】が居ると言う噂もありますので確かめて来てください」
一応『何のために?』と聞いてみたが、納得できる回答は無かった。せめて考えておけよ。
「じゃあ皆ー! 今からゲーム……じゃなかった、先生に気合を入れてもらうため、先生に【魔法弾】を当ててあげよう。この崖から自分の意思で飛び降りるのは勇気が居ると思うので、【魔法弾】を当てて背中を押してあげよう、そして先生を見事ここから落としてあげた人が今日のMVPだ。ぎゃっはっは」
――なるほど、こいつらのストレス発散に役に立てって事か。じゃあもういいか……。
「よっしゃー! じゃあ俺から行」――その前に俺は自ら崖を飛び降りた。ここまで背負って来たガラクタの入った荷物をそのまま残して。生徒達の驚き悔しがる怒号が聞こえてきた。
ヒューーーーーーーーーーーーー
おっそろそろ底が見えてきたな。よしじゃあ
「スキルLv4! 【パン】」
ポヨンッと白くてフワフワな食パン一斤が俺の手から現れ奈落の底へと落ちていく。まだまだー。
「【パン】」「【パン】」「【パン】」「【パン】」「【パン】」「【パン】」「【パン】」「【パン】」「【パン】」「【パン】」「【パン】」「【パン】」「【パン】」「【パン】」「【パン】」「【パン】」「【パン】」「【パン】」
大量の白くてフワフワな食パン一斤がどんどん奈落の底へと落ちていく。俺が奈落の底へと着くころには地面が食パンだらけになっていた。
ポスンッ
数千? 数万? もう数えきれないくらいの大量の食パンがクッションの代わりとなり俺は無傷で奈落の底へ辿りついた。
よっこらせっと パンッパンッと服に付いたパン粉を掃う。
奈落の底だから真っ暗だと思っていたのに意外と明るいな、壁に付いている光る苔みたいな物のおかげなのかな?
ドダッダッダッダッダッ ギャーギャー バタバタバタ
おや? どうやら俺が出した焼き立て食パンの香ばしい匂いにつられて奈落の底にいる【魔物】達が集まって来たようだ。
俺は少し離れたとこにある岩陰に隠れて様子を見ていた。
バグッバグッバグッバグッバグッバグッバグッバグッ
すごい勢いで食パンを平らげていく【魔物】達。あれだけの量があったのにもう無くなりそうだな。
それにしてもほとんどが【龍種】っぽいな。やはりここで生き残っているだけはある【魔物】達だ。皆すごく強そうだ。
その内【魔物】達の目がトロンとしてきた。もう良さそうだな。俺は【魔物】達に近づいて行った。
「やぁ初めまして」
俺が【魔物】達に声をかけると嬉しそうに【魔物】達は俺に寄ってきてクルルっと可愛く鳴きほほをスリスリしてきた。
「いたたたた」
流石に【龍のうろこ】は硬いな。でも可愛い。
これは俺の【ジョブ】、【パン屋】の能力だ。――おや? また【スキル】の【レベル】が上がったようだ。
「ステータス・オープン」
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名前:平 蛇俊(タイラ ダトシ)
年齢:26歳
性別:男
種族:人間族(半)
レベル:1
装備:上:純白のワンショルダーのシャツ
:下:暗黒のプレートアーマー(下)
ジョブ:パン屋:パンを生成する事ができ、自分で生成したパンは廃棄もできる。
スキル:パン Lv1:焼き立ての白いフワフワパンを無限に出すことができる。
Lv2:回復力のあるパンを無限に出すことができる。
Lv3:一時的に能力が上がるパンを無限に出すことができる。
Lv4:洗脳効果のあるパンを無限に出すことができる。
Lv5:一時的に能力が下がるパンを無限に出すことができる。
Lv6:酵母菌を付けた者とそっくりなパンを出すことができる。
:異世界共通言語
称号:【召喚転移勇者(上半身)】
――――――――――――――――――――
始めはただの美味しいパンを出すだけの能力だったが、監禁されている間、パンを出しては消し、出しては消して【スキルレベル】上げしていた。
お陰様であの部屋に居たネズミや害虫とも今では仲良しだよ。
それにしても【回復】に【洗脳】、【パブ】、【デバブ】と中々使える【スキル】になったな。新しく今覚えたパンは後で試してみよう。
『よう、聞こえるか?』
ああ、久しぶりだな、丁度今準備が整ったとこだよ。
『そうか、じゃあ今から【魔王城】に来るのか?』
そうだなー、大量の【龍種の魔物】を引き連れて行くけど大丈夫か?
『ん? 【龍種の魔物】?』
ああ俺の【スキル】で【洗脳】して配下にした。
『なるほど、お前の【外れスキル】は【戦闘系チート】じゃなくてそっち系の能力だったのか、まあ【魔王城】の地下にはどでかい【ダンジョン】があるから、そこにお前が連れてきた【魔物】達を住ませることができる。心配するな』
わかった。ただそっちに行く前にやる事があるから。
『やる事? ああそりゃそうだよな』
俺を殺そうとしたこの国の奴らにお仕置きしなくちゃいけないからな!
まずは大量の【龍種】を【王都】に攻め込ませる。さてさて【勇者】である生徒達や王族は勝てるかな? はっはっはっはっはっ!!
……………………
…………
……
半日でこの国の【王都】は落ちた……。
いくら【召喚チート勇者】共でも流石に2週間そこらじゃ【ドラゴン】を倒せるほどに強くなっていないか。
はぁ、ざまぁって言う暇もないくらいあっけなかったなぁ……行くか。
『終わったのか?』
ああ、今から行くわ。
『分かった、じゃあ近くの港街が見える丘の上まで来てくれ、迎えをやるから』
ありがとう、『よし、皆出発するよ!』、俺は【犬獣人族】の子供の手を取り、大量の【龍種】達と一緒に歩き出した……。
でも俺は、俺たちは知らなかった。結局1つの【魔人族】には成れなかった俺達が、数年後に【ルーララ】という【元魔王】の少女と死闘を繰り広げる事になるとは――。
~おまけ 魔王の方のステータス~
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名前:斬鬼(ザンキ)
年齢:55歳
性別:男
種族:魔人族(半)
レベル:500
装備:上:暗黒のプレートアーマー(上)
:下:純白のブリーフ ←オチです。
スキル:一騎当千:自分より相手の数が多ければ多いほどステータスがUPする。
:異世界共通言語
称号:【魔王代理(上半身)】
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チャンチャン
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