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第十話 一体いつから自分が主人公だと錯覚していた
~今回も魔王の回想 魔王視点です
ゴォォォォォォォオオ!! ドゴーーーーンッ!!
「なっなんじゃ??」
「ニャニャニャ? お城が揺れてるニャ、魔王様怖いニャァ」
地面がグラグラと上下左右に揺れ、辺りから悲鳴や怒号が聞こえてきたがやがて何も聞こえなくなり…。
――爆風や土埃が収まり、なんとか視界が晴れてきた。そしてわらわの眼に入ったものは…そこにあったのは……、いや違うそこには何もなかったのじゃよ…今まであった街も城も家も木も人も……。
わらわとメイドのココが立っていた場所以外すべて【メテオレイン】によって押し潰され消滅してしまったのじゃ……。わらわは呆然とするしかなかった……。
……………………
「そうそうその顔! その顔が見たかったんだよ! 突然理不尽に自分以外が全て無くなってしまった時の絶望する顔が! 見たか! これが僕の恨みだ! 僕の力だ! 勘違いしない方がいいよ、お前が生き残っているのは妙な結界のおかげじゃない、僕がわざとそこだけ狙わなかったんだ」
――空を見上げると結界の外からあの時の小僧……勇者がわらわに向かって叫んできた。
あやつ【飛行魔法】も使えたのか。
「あはは、だってそうだろ、お前も一緒に殺しちゃったらお前の絶望する顔が見られないだろ」
「まさかおぬしじゃったとはのぅ……それにしても……ここまでするとは…」
それにしても妙じゃのぉ、結界は破壊されておらんのになぜ街が…?
「おや? 不思議そうな顔をしているね、結界があるのになんでこうなったか分かっていないのかな、簡単な話だよ、ほらっ」
――結界外に居た勇者が消え、次の瞬間結界内に現れた。なるほど、【空間魔法】いや【次元魔法】か……。
「わかったようだね。この街に落ちる【隕石】だけ【次元魔法】の【次元転移】を使って結界内に移動させたんだよ。ただの【空間魔法】の【空間転移】も使えるけど、それだとお前が張った結界に阻止される可能性もあったからね」
確かに【空間転移】じゃったら防げたじゃろう……それにしても…。
どうする……わらわが甘かったせいで皆死んでもうた……あやつを倒したとしてもわらわとココだけ生きて何になる……このまま殺されるか……まさか【次元魔法】まで使えるとはのぅ……【次元魔法】?結界はまだ機能しておる、まだだ、間に合うかもしれん。
わらわは急いで【亞空間ボックス】から大きな【虹色のクリスタル】を取り出し地面に埋め叫ぶ。
「【クリエイトダンジョン】地下迷宮!!」
【クリエイトダンジョン】:【次元魔法】と【土魔法】の【融合魔法】。ダンジョンを作り出す。これを使ったものはその【ダンジョンマスター】となる。込める魔力の量、MPによって規模が変わる。
一気にMPが【ダンジョンコア】に吸われ、地中深く沈んでいった。よし次じゃ! わらわは左中指にハメていた【還元の指輪】を使った。
【還元の指輪】:1度だけ指輪を装備している者の周囲から魔素を集め魔力に還元してMPを最大まで回復させる。
「ん? なんだ空間が揺れた……? お前何かしようとしているな!?」
「ココよ! 時間がない! 今からわらわが言う事をよく覚えるのじゃ」
「ニャ?」
「この街一帯をダンジョン化した。そしてココ、お主を【ダンジョンサブマスター】に任命する。多分これでこの街で今死んだ者はその内復活するはずじゃ」
「ニャ? どういう意味なのニャ?」
「良いから聞くのじゃ! わらわは一度死ぬ。いや魔人族は一度滅びる。……お主を残してな」
「ニャニャ? 魔王様ニャにを? ココはあまり頭が良くないから分からニャいニャァ? 1人は嫌なのニャァ」
「心配するではない、殺された魔人族もわらわもしばらくしたら蘇る。だからココよ。お主は逃げるのじゃ、そして生き延びてくれ」
わらわは【亞空間ボックス】から猫のアップリケの付いたピンク色のポシェット【マジックバック】を出し、ココに押し付けた。
【マジックバック】:見た目以上に中に物を収納できる【空間魔法】や【次元魔法】を駆使して作られたバック。
「この中に生活に役立つものや【転移の石】も数個入っている、転移場所はわらわが職務をさぼりたい時によく行っていた別荘のある無人島じゃ、ココも何度も一緒に行ったことがあるじゃろ、魔王城を記録した【転移の石】も入っておるがしばらくは使っちゃだめじゃぞ【勇者】が居るかもしれんからのう」
【転移の石】:距離に関係なく1か所だけ転移場所を記録できる。石を砕くことによって砕いた使用者のみ転移できる。
「嫌ニャのニャア、魔王様も一緒にココと逃げるのニャ、死んじゃったら嫌ニャア」
「おい、魔王よ!! 僕の話を聞いているのか!!」
――【還元の指輪】はサラサラと崩れて無くなり、さらにわらわは右中指にハメていた【輪廻の指輪】に回復したばかりのありったけのMPを流し込む。
【輪廻の指輪】:魂が今ある肉体を離れ新しく生まれる肉体へと宿ることができる。正確には生まれ変わりではない。込めるMPが多いほど輪廻転生が早まる。ただし相性が良い器にしか輪廻転生できない。
「ココよ……良い子だからわらわの言う事を聞いておくれ……魔人族は一度滅びなければまたこのような事が起きるじゃろう、確かにわらわなら今のあやつに勝てるじゃろ、じゃが次の世代の【魔王】はどうじゃろうか? 次の世代の【勇者】はもっと強いかもしれない」
わらわはココの肉球を強く握る。
「だから一度魔人族は滅びたと思わせこれから先の魔人族対人間族の争いを無くさねばならんのじゃ」
「ニャァ……で、でも魔王様は【不滅スキル】を持ってるニャァ、魔王様はずっと魔王様ニャーア」
「それは違うのじゃ、理由は分からんが現に【先々代魔王】であるわらわの祖母上も【不滅スキル】持ちじゃったが亡くなっておる……。それにそもそも今回の件はわらわの失態じゃ、あやつを甘く見た……人の業を……、だからわらわは責任を取って魔王を辞めねばならん、死なねばならん。しかしわらわは【不滅スキル】を持っている者の死に方は今はわからん。じゃからこれしか思いつかんかったのじゃ」
「嫌ニャァ嫌ニャァーーーーえーんえーん、魔王様と一緒じゃなきゃココは寂しいのニャアー」
「泣かないでおくれ、すぐに会えるのじゃ、だからしばらくしたらダンジョンに戻ってきて生き返った皆に説明しておくれ。頼めるのはココしかおらんのじゃ」
「み、みんニャは生き返るのニャ?」
「そうじゃぞ、ダンジョン内で死んだ者はダンジョンに肉体と魂が吸収される、そして【漆黒結界】のおかげで死んだ魂がまだこの結界内に漂って居る。そして魂が拡散される前にこの街一帯をダンジョン化した。さらにこの街に居た魔人族はすべてわらわの配下じゃ、ダンジョン内で死んだ配下はダンジョンに吸収され、魂と肉体を再構築させるのに必要な魔力さえあれば数日で再生される」
「難しくて猫にはよくわからないニャァ…」
「わらわも、この街の皆も生き返るって事じゃ」
「絶対ニャ? 絶対絶対魔王様は生き返るのニャ? 嘘はいけないのニャ」
「わらわはがココに嘘をついたことないじゃろ?」
「でも、でもニャ……」
「くそっ! 僕を無視しやがって! もういいや死んじゃぇー【隕石】!!【次元転移】!!」
ゴォォォォオ!!
「――ココよ、魔王からの最後の命令じゃ『生き延びよ』」
「ふぇーん、魔王ニァマァァ」
「ココよ、大好きじゃぞ、わらわはココが世界中で一番大好きじゃ、だから……だから……良い子で待っておるのじゃぞ! そしてまた尻尾を触らせておくれ」
「魔王ニァマァァ、ぐすっ、ココも! ココもニャ、魔王様が大好きニャァァァァァ!!」
泣きじゃくりながらもココは右手に握りしめていた【転移の石】を肉球で砕いた。 パリンッ ――空からは【メテオ】が落ちてくる。
砕けた石の破片が【魔方陣】を描き、ココはスーと光となり消えていく、その時地面に一粒の涙が落ちた……。そして【メテオ】がわらわに……落ちた……。
ドゴーーーンッ!!
地面がまた揺れ、巨大なクレーターが出き、その中心にわらわだった物がぐちゃぐちゃに潰れて散らばっていた……。
…………
「……死んだか……魔王の結界も消えたし……もう……終わったん……あれ? なんで涙が……やっと復讐できたのに……ちっともうれしくないや……僕は、僕は……もう帰る……」
~魔王の回想 終わり
『という訳じゃ!』
ほじっ ほじっ
結構重い話なのに鼻をほじりながら私にぶっこんできた……。
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