第十一話 馬子にも衣装

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第十一話 馬子にも衣装

『ふぇ?』 (もおぅ、人の体を勝手に動かして鼻をほじらないでください!) 『おお? そう言えばわらわの意志で動かせておるのぉ』  魔王さんは一通り体を動かして確認すると『ほれ、返すぞ』と言い、なんか大人しくなった。 (あっ!? 体が動かせるように……戻ったわ……何でしたっけ? そうそうそれで、私の体に転生して来たってことですか?) 『そうじゃそうじゃ、わらわは運が良かった、こんなすぐに相性がいい器が見つかったんじゃから』 (そうですか……) ――それにしても魔王さんが嘘を付いているようには思えないし、勇者様がそんなひどいことをしていたなんて……。 『ということで、早くわらわの体から出ていってくれんかのぉ』 (は?) 『本来ならわらわほどの魂が入った場合は元々の魂は消滅するか、吸収されるか押し出されてしまうかの3択じゃ、なのにまさか普通に魂が残っとるとは……びっくりじゃ!』 (びっくりじゃ! じゃないですよ、何で私が出て行かなきゃならないのですか?) 『そういわれても赤子の体に大人2人は狭すぎるじゃろ』 (ワンルームマンションみたいにな言い方しないでください) 『ワンルームマンションが何かは知らんが、わらわは色々やる事があるので体が無いと困るのじゃよ』 (私だって困りますよ)  バサッバサッ ……チュン チュン チュン  窓に小鳥が止まった。 『小鳥はかわいいのぅ、そうじゃ! そこの小鳥とかに魂を移せばよいではないか?』 (移せば? まあ小鳥には移る気ないけど、ちなみにどうやって移るんですか?) 『ん? お主たちの元居た世界では魂を移したりできるんじゃないのか?』 (どこでそんな話を聞いたのか知りませんが、それは映画や漫画の世界の話で実際は出来ないと思います、魔王さんは出来るんですか?) 『わらわか? いや出来ないぞ』 (……) 『仕方がないのぅ、じゃあ自由にこの赤子の体を使える日にちが、わらわが週に6日、お主が1日でどうじゃ?』 (なんですかその偏ったシフトは……、半々で行きましょう) 『……わらわが週に5日、お主が2日でどうじゃ?』  ババーーンと右手の指を5本、左手の指を2本立てて突きだしてきた。  ちっちゃくて可愛い指ね、自分のだけど。 (……半々で行きましょう) 『……じゃあ、わらわが』 (――半々で行きましょう!) ――しばし時間が流れた。 『仕方がないのぉ、じゃあ1日交代でどうじゃ?』 (それで手を打ちましょう、そもそもこれは私の体ですよ、もっと感謝してくださいよね) 『そうは言ってもじゃのぉ、もしわらわが居なかったらお主はもうすでに死んで居たんじゃぞ』  ポムッポムッと布団を叩きながら抗議してきた。 (え? どういう事ですか?) 『お主の【コンティニュー】というユニークスキルはわらわが転生して来たからこそ出現したスキルじゃとわわらは読んでおる』 (え?) 『その【コンティニュー】というユニークスキルはわらわが持って居った【不滅スキル】というユニークスキルの劣化版じゃよ。いや正確には、お主が転生時に貰ったであろう【時空魔法】と、わわらの【不滅スキル】が融合したスキルだとわらわは睨んでおる』 (【時空魔法】と【不滅スキル】が融合?) 『そうじゃ、【時空魔法】で時間を巻き戻せる。【不滅スキル】で死なない。それらの劣化版なのじゃから結果【少しだけ時間が戻る時空魔法】と【回数制限がある不滅スキル】。その2つが融合すると……どうじゃ! まさにお主のスキル【コンティニュー】じゃろ?』 (うーん、まあ言われてみればそうかもしれないけど、でもそれだけで?) 『むっ、そ、それにお主の最大の危機を救った【身代わり人形】、あれはわらわの可愛いメイドのココが自分の尻尾の白いフサフサな毛を使って、わらわの為に、お守りとして作ってくれた大切な人形なんじゃぞ』 (そうだったんですか?) 『そうじゃ、まだいっぱい証拠があるのじゃ! たとえば【コンティニュー】した時の特典で貰った【結界の指輪】だって、わらわの【漆黒結界の指輪】の属性違いの劣化版じゃし、お主が選んだ【召喚魔法】や【風魔法】だって、わらわの得意魔法じゃし、選ばなかった【土魔法】や【錬金】だって、わらわの得意だった魔法やスキルじゃぞ!』 (でも魔王さんて大体の魔法やスキル得意だったのでは?) 『そりゃまぁ、なんせ魔王じゃしのぅ、あとは、そうじゃ! お主は【コンティニュー】のおかげで、死ぬ度に強くなっていくじゃろ? それはまるで蛇の脱皮と同じじゃ、蛇の脱皮は死と再生を司ると言われ不老不死の象徴と昔から言い伝えられておる』 (えーとそれがどうしたの?) 『感の悪いやつじゃの、不老不死とは、まるで【不滅スキル】を持って居たわらわの事じゃろ、な、【お主】=【コンティニュー】=【蛇の脱皮】=【不滅スキル】=【わらわ】になるわけじゃ』 (こじつけの様な気がするけど……あっ? じゃあもしかして【豪華だけの趣味が悪いよだれかけ】も魔王さんにゆかりのある一品?) 『いや、それは無関係じゃぞ……それよりそうじゃ【土魔法】で思い出したぞ! あやつ……勇者と戦っていた時の事じゃ。わらわが得意の【クリエイトグレートゴーレム】で作ったグレートゴーレム10体をあやつの目の前で合体させて【キンググレートゴーレム】にしてやろうと思い『お主ごときの相手はこいつらで充分だ! 合体せよ! グレートゴーレム!! 真の力を見せてやれ!』って叫んだ瞬間……』 (瞬間?) 『あろう事かあやつは【聖剣】で全部の【グレートゴーレム】を切り刻んだのじゃ!! 考えられんじゃろ? 男の子なら普通ワクワクしながら合体し終わるまで待つじゃろ! だからボコボコしてやったのじゃよ!』 (……そうですか、話は変わるけど、そう言えばじゃのうさん、違った魔王さん、名前はなんておっしゃるんですか?) 『名前?……名前か……あれ?……わらわの名前はなんだったかのぉ、思い出せん……』 (思い出せない? あっ! ステータス見ればいいのでは?) 『おお! そうじゃそうじゃ、お主赤子のくせに賢いのぅ、じゃあお主は力を抜いて、わらわに体の自由権をよこすのじゃ、わらわを【表】にするのじゃ』 (【表】? 良く分からないけど、力を抜いた状態になればいいのね)  スーっと私は体から力を抜き無の状態になってみた。 (はいこれでどうかしら?【ステータス・オープン】って言ってみてください) 「『あうーあうあ・あーうあ!』」 ―――――――――――――――――――― 名前:ルーララ・フォン・オフィウクス(オフィウクス王国第1王女、転生者) 年齢:1歳 性別:女 レベル:10 HP:1000 MP:3000 攻撃力:100 防御力:1000 魔力:3000 素早さ:1000 運:100 装備:豪華だけの趣味が悪いよだれかけ・改   :花水木(ハナミズキ)な香りのおむつ   :洗濯したらなんかいい感じに所々色落ちした、    悪徳商人に旨い事騙されて買った成金趣味のベビー服(布袋柄風)   :結界の指輪 スキル:ダンジョンマスター:Lv1ダンジョンメイキング←New 称号:【現地転生者】、【元魔王】、【ココ大好きっ娘ちゃん】 ―――――――――――――――――――― (うまく交代できた様ね……うーん、それにしてもまたもや色々突っ込みどころ満載ね) 『そうじゃのぉ』 (1つ1つ整理していきましょう。まずは魔王さん、私と名前が一緒というか元の名前が無いですね……) 『まぁあ無いならないで、わらわもルーララでよいわ』 (……淡泊ですね、あっ称号とかも持っている……、あとステータスすっごいですね?) 『ん? そうかのぉ』 (あと、よだれかけが改良されていて、勇者様と100年続きますようにって最近よく思う原因はおむつのせいだったんかい! ふーふー) 『ほう、一気に突っ込んじゃのう、それにしても、スキルが新しく習得した【ダンジョンマスター】だけになって他が全部消えておるのぉ……戦闘は厳しいのぉ』 (肉弾戦でなんとかなるんじゃないかしら?) 『これではあの小僧には勝てんのぉ』 (もう戦わないでくださいよ! 転生した意味が無くなりますよ)
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