第十三話 額と魔王さんと私

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第十三話 額と魔王さんと私

『という訳じゃ!』  ほじっ ほじっ (なんで魔王さんは回想シーン中、毎回鼻をほじほじするんですか?) 『んっ?』  グリ グリ ぺタッ (ああもう! ほじり取った物を服に付けないでください)  私は服に付いた場所を見て……。 (ああー? これじゃあまるで【洗濯したらなんかいい感じに所々色落ちした悪徳商人に旨い事騙されて買った成金趣味のベビー服(布袋柄風)】を使って、私ここを選ぶわって、なんかあみだくじやってるみたいになってるじゃないですか!) 『んっ? よくわからんが落ち着くのじゃ』 (ふー、そうね) 『要はわらわがココに渡した【マジックバック】に、あの【スキルオーブ】が入っておって、それをわらわを取り戻すために使ったんじゃろ。ココもあの小僧の強さが分かっているから盗賊ゾンビを使ったり離れた場所でおびき出したりと、ココなりに色々策を考えたんじゃろ、成長したものじゃ』 (――じゃあ魔王さんが私の体に転生して来なかったら馬車は襲われず平和に暮らしてたのでは……) 『……まぁそうとも言うのぉ』 (はぁ、もう今更攻めてもしょうがないから言わないけど) 『そ、そんな事よりもココがまた無茶しないように、わらわが早くここを出てココに会わねばならんのじゃ』 (ここを出てココ……フフフ)  ガタンッ  わっ? びっくりした……どうやら壁に飾っていた立派な額縁の絵が床に落ちたようだ。 『わらわもびっくりしたのじゃ、そうそうそれでじゃ、お主には魔物とかと戦って強くなってもらい、死んで貰わないといけないのじゃ』 (何でそこで死ぬって事になるのよ?) 『お主とわらわのレベルは連動しておる、だからお主が強くなればわらわも強くなる…ステータスだけじゃがな』 (……そうね、でも連動しているなら私より100倍強い魔王さんが戦った方がいいと思うけど) 『お主は死ぬ事で【コンティニュー】特典のスキルやアイテムが貰えるじゃろ、わらわは貰えぬのじゃ』 (……まあそうだけど) 『それに仮にわらわが【表】に出ている状態で死んだらどうなると思う?』 (あっ) 『うむ、多分じゃが2人とも死ぬ、もしくはわらわだけ死ぬ。の、どちらかじゃろう』 (そうねかといって試すのは危険だしね) 『それに色々スキルが無いと大変じゃしな、最低でもお主が自力でこの世界の言語を覚えるか【共通言語スキル】が無いと厳しいのじゃ』 (え? 魔王さんこっちの言語を話せるんじゃ? あっ? 人間族と魔人族では言語は違うって事?) 『微妙に違うがもちろん両方話せるのじゃ。だがわらわは今赤子じゃ言葉をちゃんと発する事が出来ない、それにお主と違ってわらわは今【念話スキル】を持っていない、わらわ達が話せているのは体が一緒だからじゃぞ』 (あっ、そっか……) 『そうじゃ、だから仮に今ココと出会っても正確に伝えるすべがないのじゃよ、この体の中にわらわが居るって分かっておっても、意志疎通に苦労することが目に見えておる』 (またお勉強かぁ……) 『後欲しいのは【空間魔法】じゃな【転移】や【飛行】など移動に便利魔法を覚えていくし、それと【次元魔法】があればもしかしたらわらわの【亞空間ボックス】に干渉できるやもしれん』 (でもこの体じゃ魔物討伐とかには連れて行って貰えないわよ) 『そこはほら、お主のメイドのネネに何とか頼みこんでじゃな』 (いやいや、だから言葉の壁が……) 『そうじゃった……結局そこに行きつくのじゃよなぁ……あっ忘れておった、お主に聞きたいことがあったんじゃった、ネネには姉妹が居らんのか?』 (ネネに姉妹? うーん聞いたことないけど、どうしたの?) 『いやな、お主のメイドのネネとわらわのメイドのココなんじゃが、そっくりなんじゃよ、瓜二つ。違いは毛の色だけじゃ、ネネは黒じゃがココは真っ白で綺麗なんじゃよ』 (むぅ! ネネさんだってまっ黒でツヤツヤのフサフサですごく綺麗よ、もう、でもそんなに似ているのか。会ってみたいわ) 『すまんすまん、もちろんネネも綺麗な毛並みじゃよ』 (あっそうだ。あの時みたく勇者様に間に入ってもらえばいいんじゃない、これで解決ね) 『ア、アホかお主!もし仮にわらわの正体に気づいたらどうするつもりじゃ!絶対にめんどうな事になるぞ』 (……そうよね、じゃあどうするの?――あれっ? 普通に魔王さんが私にこっちの言葉を教えたらいいんじゃない?) 『なっ!……確かに、盲点じゃったわ』 (……とりあえず、言葉の方はこれで解決ね、後はレベルアップの方法か……) 『こんな事は赤子には言い辛いんじゃが……窓から落っこちるってどうじゃろ?』 (……えっ? ああなるほど、そういう事ですか、でも自分で死んだ場合でも【コンティニュー】出来るんですかね?) 『出来ると思うんじゃが……もしも……って可能性も……やっぱり止めておくのじゃ』 (あっ! 良い事閃いちゃった。【召喚魔法】よ! 【転移召喚】でこの私の寝室に魔物を召喚すればいいのよ) 『おお流石じゃ』 (そこの窓から丁度森が見えるのよ、森の中なら魔物とか居るんじゃない?) 『うむ、居そうじゃな』 (ちょっとまっていて、レベルアップした【サーチスキル】の詳細を確認するわね) 【サーチスキル】の詳細が聞こえてきた。【Lv1:探したい任意の人や物がある場所を捜索する。有効範囲は20M以内】 (【有効範囲は20M以内】か――ぎりぎり森の入り口辺りって所かしら?) 「あーう、あーうう」(サーチ、スライム) 「……」 「あーう、あーうう」(サーチ、ゴブリン) 「……」 (ねぇ? 魔王さん、森の入り口に居そうな魔物ってあと何がいるのかしら?) 『うーむ、そうじゃのぉ、あの森なら、ウルフやオーク、ボーンラビット、ポイズンスネークなども居そうじゃのぉ』 (わかったわ、やってみるわね) …………  結果何も居ませんでした……。 (うーん、もっとレベルアップして有効範囲延ばさないとダメみたいですね) 『残念じゃったのぅ、でもそもそもお主の【転移召喚】は対象を視界に入れなければダメじゃったろ?』 (そういえばそうね、この距離でしかも肉眼で見るのは厳しいわね) 『ちょっとお主の持っている【召喚魔法】の詳細確認させてくれんかの?』 (分かったわ) 【召喚魔法スキル】の詳細が聞こえてきた。【Lv1転移召喚:任意の人や物を使用者の前に転移召喚する。有効範囲は10M以内】 『【有効範囲は10M以内】……10m以内にはお花畑と池しかないのじゃが』 (そっか、ダメかぁ、良いアイディアだと思ったんだけどなぁ)  そうだ! ふふふっついでに勇者様がどこにいるか確認しておこう。 『なんか……ストーカーみたいじゃのぉ』 (ちっ違うわよ、ちょっと気になるだけ) 「あーう、あぅーううっ」(サーチ、勇者様)  ピコンッ  すると目の前に半透明の地図が現れる。中心である私の近くに青い丸が1個点灯している。あら? 今はお屋敷内に居るみたいね。  そして私は【サーチ】を解除した。だたその解除の瞬間、半透明の地図に赤い丸が1個ピコンッ点灯したことに私は気づかなかった……。
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