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常連客は親友
三浦が朝田を見送ると入れ替わるように客が尋ねて来た。
「朝田君は居るかね?」
「あっ高橋専務、いらっしゃいませ朝田は只今留守にしておりますが、なにか御用でも?」
この高橋専務と朝田部長は同期入社でもあり、一歩会社を出ると俺お前の間柄である。
「留守ってことは会社には来とるんだな、奴何か言ってなかったか?」
「何かって?」
「腕が痛いとか? 気分が悪いとかだよ」
「いいえ? いつもと変わらないご様子でしたけど・・なにか?」
「いや、それなら良いんだ、でぇ何処へ出かけたんだ?」
「専務、いくら専務でも朝田の行動は他言できない決まりになっておりますので。直ぐに戻りますのでお掛け下さい、今お茶お入れしますので」
三浦が給湯室に姿を消すと高橋は前室のソファーに腰を落とした。そして一人呟いていた。
(そーか、いつも通りか・・そりゃ良かった)
「は~い、お待たせしました。何時ものように温いのにしております。専務、何が『良かった』んですか? 私、聞いちゃいましたけど?」
「な~に朝田がいつも通りだって聞いたんで安心したんだよ」
「うちの部長ってどこかお悪いんでしょうか? 気が付かなくて申し訳ございません」
高橋の言葉に違和感を感じた三浦は、朝田の身を案じてか高橋に探りを入れた。
「そういう事ではなく何だ、あいつ昨日ワクチン接種したんだろう?」
「昨日? 専務、それは在りませんわ、だって昨日は日曜日ですよ⁉ それに朝田のワクチン接種なら今、医務室に行かれたところですよ」
(しまった、行先バラしちゃった、でもどうして昨日は日曜日なのに高橋専務ったら・・まさか?)
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