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少しだけ助けて欲しい
「少しだけ、少しで良いから助けて欲しいんだよ、きっと風美もまだ覚えているはずなんだ・・それを教えて欲しい、それだけでをお願いしたくて来たんだよ!」
(何言ってんのこの人、未練たらしく少しだけなんて言って、自分から別れてくれって言ったくせに、馬鹿にしてんのね!)
「淳の言ってること、全く分かんない!・・教えて欲しい?なら、電話で済むことでしょ! なにも会社まで成りすましで来ること無いじゃん」
「君の携帯の番号・・ど忘れしたんだよ・・」
「携帯に登録してたんでしょ・・あっつそうか、離婚した途端、アドレス帳から削除しちゃったんだ?」
「携帯はマンションに忘れて来たままなんだ」
「それじゃ取に帰ればいいじゃん」
「そこなんだ、だからお願いに来たんだよ・・マンションのID番号ど忘れしちゃって、風美ならまだ・・ねえ、まだ覚えてるだろ?」
蒲池の言葉に三浦は一瞬だが、背筋が凍るのを覚えた。確かに結婚前からも二人は生活を共にしていた。だから三浦もオートロック解除のIDはまだ覚えているかも知れない。
「ちょっと待ってよ! ID忘れた本人が私に訊く? 淳さぁさっきから何言ってんのか分かってんの、アンタ今、何処で寝泊まりしてんのよ⁉」
三浦の怒鳴り声が、いつのまにかすすり声に換わっていた。
「そんなの知らなくてもいいから僕のID番号教えてくれよ」
(まだ35歳なのに毎日過ごしてるマンションのIDどうしたら忘れる? いや嘘だ!きっと何か企んでる、私とよりを戻したいから?・・んな訳ないか、あの時の離婚話は淳が言い出したことなんだから、とにかくもう二度と裏切られたくはない。)
「淳、アンタそれ芝居じゃないよね、今日はタダでさへ忙しいんだから、からかわないでよ!」
「あっそうか・・風美も忘れてしまったんだ、そりゃ一年近くになるもんな?僕らのマンションのIDと部屋番号・・」
「へぇ~なんなの部屋番号も分かんないの?」
「だからさ~ねえ覚えてるんだろ、教えてくれよ」
(えっホント部屋番号も?・・もしかして淳の奴、若年性アルツ・・・んな訳無いよな、よ~し!淳の話しに嘘はないか、部屋に置き忘れた携帯を確認すれば、本当のことが分るはずだ、こうなりゃ少しだけ騙されてやろう、取りあえずこの事態を早く終わらせないと、今日の仕事が山積みなんだから)
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