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アンは実績の高い妖精について調べました。そして、アンと同時期に人間界に出た妖精で、一番実績のある青年、ジェシーの存在を知りました。
「たった一ヶ月で、ジェシーによりお菓子を口にした人間が百万人ですって? そんなことあるの? とにかくジェシーと話をしたいわ」
アンは人づてを使って、ジェシーの家を訪ねました。ジェシーの家は豪邸で、アンの実家とは大違いでした。ジェシーの家の門番と掛け合うと、ジェシー本人が出てきてくれました。仕立ての良い服を着ている、賢そうな青年でした。
「なるほどね。僕のやり方を教えて欲しいと」
「ええ」
「こちらだけ手口を教えるのは不公平だ。まずは君のやり方を教えてくれるかい?」
「私は、お菓子を見つめている人間の耳元で『食べちゃいなよ!』と呪文を唱えます」
アンが説明すると、ジェシーは途端に吹き出しました。
「あっはっはっはっは。そりゃ上手くいかないね」
「どうして!?」
「君のやってることは悪魔の所業だからさ」
「え?」
「やれやれ。君にはろくに教育してくれる人間がいなかったんだね。教えてあげるよ。まず、人間と妖精は違う生き物だ。妖精はお菓子だけを食べてもいいが、人間はお菓子を食べすぎると体を壊すよ」
「ええ!?」
「食べすぎると病気になったり、太ってしまうんだよ。そして人間たちもそれをよくわかっている。だから、お菓子を食べすぎないように節度を持って過ごそうとしている。君の『食べちゃいなよ!』はただの悪魔のささやきさ。人間のためになっていないんだよ」
「……じゃあ、あなたはどうしてるの?」
「今それを説明しても君は理解できないね。まずは見に言ってごらん。君が『食べちゃいなよ!』と言ったあとお菓子を食べた人間が、幸せになっているかを」
「わかったわ」
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