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「ジェシー、あなたの言うとおり、私の『食べちゃいなよ!』はよくない呪文かもしれないわ。ジェシー、あなたは一体どうしているの?」
「見せてやるからついておいで」
ジェシーが人間界に行くのに、アンも同行しました。
ジェシーはとある大きな建物のところにやってきました。大きな建物の中には、羽振りの良さそうなおじさんが、革張りのソファーに座って、電話で話していました。
「君はここで見学していて」
おじさんの電話が終わるタイミングを見計らって、ジェシーはおじさんに声をかけました。アンは部屋の端っこでひっそり会話を聞きました。
「おお、ジェシー、よいところに」
おじさんはジェシーを歓迎しました。
「社長、新製品の売上はいかがですか」
「上々だよ。君の助言のおかげさ」
「アン、この人は製菓会社の社長さ。代々うちの家と手を組んで商品開発している」
社長との打ち合わせを終えたジェシーは、アンに話しました。
「なるほど……会社の業績がジェシーの実績になっているのね」
「そうさ。僕の家は先祖代々そうしてきた。人間と友達になり、協力して、どうやったらお菓子の素晴らしさを広められるか長いこと努力してきた。その積み重ねが今なんだよ」
「そうか、私もお菓子を作る人に協力すればいいのね!」
「そうだ。大事なのは人間と友達になること。悪魔じゃなくてね。そして、人間のいい思い出にお菓子の味が残るようにすること」
「いい思い出?」
「ああ。思い出の味を、人間は決して忘れない。子供の時に好きだったお菓子は大人になっても食べたくなるし、自分の子供にも食べさせるものさ」
「ありがとう! こんなに丁寧に教えてくれて」
「教えるぐらいいいよ。実際にやるやつなんていないんだから。やれるもんならやってみろって話」
「え?」
「僕の家のやり方は、効果はあるけど大変だからね。今の僕の実績は、僕の先祖が作り上げたものを受け継いでいる。僕一人の力ではない。だからなんとかやれているけど、君がこれをやるならなにもかも一からだよ。果たして君にできるのかな?」
「な、なんですって! 私にだってできるんだから!」
「じゃあせいぜいやってみたら? 楽しみにしてるよ。じゃあね」
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