きらきら

3/9
前へ
/9ページ
次へ
 だが辺りに広がる退廃的な姿のせいか、電気供給や水道と言ったまともなインフラが活動してはおらず、街角の街灯にはチカチカ、と点灯していた。だがそのような様子を横目で眺めがらも、僕はその足を止める事は無く、色とりどりに耀く街を歩き続ける。  赤、蒼、黄、緑、紫、橙、白、目が痛くなるほどの多くの色の数々が僕の瞳の中に入る。  上がった陽の光は街の中に彩る宝石の数々を耀かせ、その陽の光すらも、宝石たちによって澄んでしまい変色する。  まるで色の無いつまらない世界が宝石で彩られるように、宝石は耀き街を照らすが、そのような宝石の山の数々があろうろも、人は何も変わらず、人の心には何色も彩を与えなかった。  建造物や道路などの無機物の物から宝石が沸き上がる事には最初は、誰だって歓喜した。  市場では常時、宝石によるインフレが起きる様な事が起きて、人々は大いに喜んでいたが、今はこんなディストピアな世界を見て、誰も喜ぶ人なんていなくなった。  いや、忘れてしまった、と言う方が正しい。  鉱石とは一種の固形物という事を誰もが知っていながらも、誰もが忘れてしまい、宝石と言う悪魔に魂を奪われ、十先に命を宝石(あくま)に奪われた。  何かの要因で、人々の体の中から鋭く、固く恐ろしい好物たちが突き立てられ、又は解き放たれ、多くの人が変貌した。  死と言う永久的な停止を持って。  それがいつからか『結晶病』又は『鉱石病』と呼ばれる病と言う形の名前で呼称され始め、欲に溺れた人たちからそのような病に罹り死んでいった。  身の安全なんて知らずに、真っ先に欲に走り独占しようとしたものから速く、愚かに、無様に、死んでいった。  滑稽(憐れ)な姿となって、一人、また一人と犠牲者が増え続け、あっという間に人類の総人口が三分の一までに減少した。この病は、発見されて二年近くあるけど、ワクチンはやっと政府が配布したばかりで、正式な治す方法はない。只犠牲者が増えるだけだった。  それに故にか、この病は不治の病とも言われ、治る方法が未だに見つからないというのに、感染力が強く、免疫速度も今まで以上の病原菌とは違い、異常なほど高かった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加