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彼女から差し出されるハンカチを手に取り、残った細く白い肌を見て、僕は再びその恐怖感を強くさせる。
これ以上関わりたくない。そう体で判断した僕は逃げる様に体を反転させると、あのっ! と声がかかり、僕の肩にその細く脆い、綺麗な手が食い込んでくる。
「な、何ですか?」
震える声を必死に抑える様に、肩を掴まれたままゆっくりと振り返る。
もうこれ以上、彼女に付き合いたくないし、慣れ早期も無い、何より関わりたくない。
ましてや、あの憎たらしい顔が僕のことを見てくるという事が見ていて嫌になる。気持ち悪くなる吐き気がする。
振り返った瞬間、小さく冷たい風が宝石の砂粒をのせ、俺たちの顔の間に庁の様に飛んでいく。
そのような時間が過ぎながら彼女は俺に向かって静かにその口を開き始める。
「………」
「何か?」
「もしかして、どこかでお会いになりましたか?」
「………記憶にございません。貴方の勘違いではないですか?」
「む、むぅ、そうですかね?」
勘違いであれ、記憶違いであれ、あの女と再び出会うなど、輪廻の縁と言う物の影響力が強く感じてしまう。
それはもう、いやな方で。
俺は誤魔化すように、彼女に向かって冷たく言い放ち、そのまま去ろうとするが、彼女は何故か僕の腕を掴み始める。
「………何ですか?」
再び僕はその言葉を口にする。
イラつきと言うべきか、呆れと言うべきか、それに似た声音が彼女の方に向けられるが、彼女は別に可笑しいことを一つもしていないと言わんばかりの表情で僕の事を見てくる。子の表情は全くと言っていいほど、人の事情を知らない、無垢でお人好しで、時に人をイラつかせる不躾な顔だった。
故に僕のことを非常にイラつかせる。
「え、えっと………」
「………何も無いのでしたらこれで。離してください。僕にも用があるので」
「ご、ごめん、けど………少し待ってくれない?」
少し? それはどのくらい?
何時? 何分? どれくらい待てばよい?
具体的な例が無いのに、人の時間を奪うというのは、尚更、人の事を腹立たせる。
「でしたら早くご用件を。僕だって暇ではないんです」
「ご、ごめん! でも本当に待って!」
待って、その言葉は聞いた。聞いたからこそ、早くしてくれ。
僕は彼女の舞ってを聞くたびに、理性が徐々に擦り削れて行く。
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