0人が本棚に入れています
本棚に追加
きらきら
「もし、この世界がキラキラの宝石になったら……君はどうしたい?」
二の腕まで巻かれた包帯と入院着を着ていた僕の目の前で、白衣を着ていた彼女は紅色の液体が入った透明な容器を持ちながら、妖艶でどこか下卑たような舌なめずりをしながら、彼女は僕に問うてくる。
そんな彼女に僕は巻かれている包帯を強く握り、睨みつける様に冷たい視線を彼女を見つめ続ける。
妖艶で下卑た視線か、或いは、世界が変わることに歓喜するような視線か、はたまた、これから起きる悲劇の惨状に嘲笑うかのような視線を、小さな頃の僕に舐め割すように向けてくる。
笑みを浮かべ、舐める様に見て、狂気の中に包まれる様に話しかけてくる。
――何を言っている?
その姿に、小さな頃の僕は強い嫌悪感と理解できない感情に包まれる。
とはいえ、理解できないものに包まれていながらも、当時の僕は、笑みを浮かべるその彼女に対して、僕は何もせず、何も言わず、そんな彼女の事を睨みつけて居た。
◇
「………くそっ」
最悪の目覚めだ。
頭の中がガンガンと鈍い警鐘が鳴り響く中、僕はその警鐘を振り切るように重く鈍い体を上げて先程まで寝ていた寝台を降りる。
そんな中でも、頭の中はずっとガンガンと響き、僕自身の体調を更に悪くするように、必死に体を動かし歩いて散歩も無い洗面台に向かう。
「最悪な顔……」
鏡に映る僕の顔は、死人の様に青白く、先程まで泣き叫んでいたのではないかと思う程のぐちゃぐちゃになった顔が映っており、僕はそんな汚い殻から目を背ける様に、それとも、先程まで見ていた嫌な夢を吹き飛ばすかのように顔を洗い始め、濡れた顔を再び鏡に映す。
「はっ」
それに、僕は乾いたような笑い声を上げながら、先程と同じ汚い表情を浮かべていると、鏡の中の僕も真似る様に気持ち悪い笑みを浮かべていた。
「は、ははっ………」
ガシャン!
瞬間、大きな音が鳴り響く。
目の前にあった鏡は歪んだ罅が入り、その隙間からは、にやけた笑みを浮かべた俺が映っており、鏡に向かって振るわれた拳は小さく紅い体液を流していた。
罅が更に罅を誘うように、鏡全体に波紋の様に広がっていく。
「また、血が出たな」
最初のコメントを投稿しよう!