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一瞬心が動いた。確かに苦しみの無い世界は素晴らしいかも知れない。だけれど、それでもまだ生きていたいと思った。さっきのドキドキをもう一度リアルで味わいたい。生きてさえいればホンモノの紗江ちゃんに会えるかも知れない。そうだ、助けを呼ぼう!
「あれ? スマホなんか出してどうしたの? もしかして電話しようとしてる? ここはもう、人間の世界じゃないから通じないわよ。ふふふ」
人間の世界じゃないなんて、そんな……スマホの画面は無情にも圏外を示している。それが何を意味するのか、恐る恐る聞いてみた。
「違う世界にいるってことは……、ボクはもう死んでるってこと?」
「まだ死んでないけど、もうすぐ楽に死ねるわ。私は、あなたを苦しめるつもりは無いの。さっき、疲れて辛いって言ってたじゃない。そんな人間の世界より、私の中でステキな夢の世界で過ごす方がずっといいと思わない?」
彼女の『提案』に対して、自分の中で、もうあきらめようかと言う気持ちと、まだ生きたいと気持ちが争っている。でも、悪魔の誘いに屈したくは無かった。
「それでも、生きていたいんだ」
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