終章~誘惑の末路

4/5
前へ
/10ページ
次へ
 ボクがそう言うと彼女は、身体を突然近づけてきた。大きい胸とやわらかい感触が、悲しいかな、本能に火をつけてしまう。 「ふふ、身体は正直だね。夢の中で、いくらでも好きなことをしていいんだよ。キミのえっちな願望もかなえられるんだよ」 「だ、だけど……」 「まだ、諦めないわけ? じゃあ、もう逃げられないように、ギュッてしてあげるね。そして、さっきの匂いをかがせてあげる。これは香水じゃないの。人間で言うフェロモンに近いものかな。さっきは手加減したけど、今度は全力だからね」  ものすごく甘くていい匂いがしてきた。さっきまで生きていたいと必死だったのに、そういう気持ちが消えてゆく。身体の力もどんどん抜けて、身動きも取れなくなってきた。 「もう、身体を動かすこともできないみたいね。それじゃあ、あなたの美味しそうな魂をいただくわ」  ボクは死ぬ。それを悟った人間の本能だろうか、もうほとんど動かない身体がわずかに震えている。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加