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「5000兆円欲しい!」
普通の女子高生である私、佐々岡つかさはそう答えた。なぜそんなことを言ったかって? それは「欲しいものを言ってみな」なんて言われたからだ。欲しい物がなにか聞いてくる人なんてのは、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、友達……それらじゃなければ何かしらの下心を持った人だ。例えば、営業マンとか、スカートと胸元ばっかり見てくる汚いオジサンとか。さらにそれ以外にいるとすれば、それはそう、占い師だと思う。
実際、私が答えた時に質問してきた女は占い師だった。友達のケイに連れられて来た駅前のビルの地下にある占い屋さん"Pacifism(パシフィズム)"。昔からあるけど行ったっていう人を聞いたことはない。そんな占い屋さんに恋愛相談をしに行ったケイに付き添って、私は来た。
「5000兆円欲しい!」という言葉は最近聞いて、なんとなく印象に残っていたフレーズだ。私自身はいわれはよくわかってないけれど、クラスの男子が口にしていたのを覚えてる。ぼんやりと、それくらいあればたしかに無敵だなー、なんて考えたものだった。
だから、咄嗟に「欲しいものは何か?」と聞かれた時にそう答えたのだろう。
「あなたが本当にそれが欲しいと望むなら、その手伝いができるわ」
黒基調の部屋に薄暗い間接照明、目の前の机には紫の布に水晶があって、それを挟んで向かい側にいる巫女服の眼鏡の女、つまり占い師は私に向かってそう言った。駄菓子のCMでこんなセットあった気がするなぁ、なんて考えていた私は、話をしっかりとは理解できなかったみたいだ。
「5000兆円を手に入れる手伝いを? 占い師さんがしてくれるって言うの? どうやって?」
5000兆円なんて、日本の国家予算のだいたい50倍くらいだ。「無限にお金に困らない生活をしたい、欲しいものを買うことに困りたくない」の比喩的表現にすぎないことは私自身がよくわかっている。
「占い師は、相談する人の願いを聞く仕事だから。あなたがそれを本心で望んでいるなら、うまくいくように力を貸すわ」
「私は、それをどうやって、って聞いてるんだけどなー」
「それはこう……占い的なパワーで、どうにかするのよ。あなたに言ったって、理解はできないわ」
「ふーん。占い的なパワー、ね……」
どうにも胡散臭い。占いは朝のテレビだったり雑誌だったりアプリだったりで目にかけたら見たりはするけど、私は特別信じるタイプというわけではない。だから当然、対面にいるこの占い師のことも信用していない。
「どうする? 力……。ううん、5000兆円、欲しいの? 欲しくないの?」
占い師は、まるでお菓子を出すか出さないか聞いてくるお母さんみたいな感じで聞いてきた。
下手に否定したって面倒だ。実際この占い師が本当に5000兆円をくれるっていうなら、それはそれで困ることもない。
「5000兆円、欲しいです」
だから私は改めて、そう答えた。
「そう、5000兆円、欲しいのね」
「はい、欲しいです」
「わかったわ」
そう言うと、占い師は水晶に手をかざした。水晶に沿った形でこねこねと動かしている。IT系の社長がこんな動きしてたなぁ。
占い師は手を止めてこちらを見た。手をこねこねし始めてから10秒くらい経った頃だろうか、知らない人との無言のやり取りはとても長く感じるから、もしかしたらもう少し短かったかもしれない。
「準備はできた。2つ、約束してほしい。そうすればあなたは5000兆円を手に入れられる」
手こねこね回してただけで何の準備ができたのか私にはさっぱりわからなかったけど、何かの準備が整ったらしい。
「1つ、追加料金として、明日行ってもらうところで……えーっと、1円、払ってほしい。電子マネーがあればなおいい」
「1円? 別にそれくらいかまわないけど……。バーコードのやつで大丈夫?」
「それで大丈夫」
この占いの料金は30分で3000円。私は今更1円どうこうで躊躇わない。"明日行ってもらうところ"が若干気になるけど。
「2つ……今回言った自分の願い、つまり"5000兆円欲しい"という気持ちを絶対に曲げないでほしい。そうすればすぐその願いは叶う」
「まぁ、欲しいのは間違いないし、それだけでいいならべつに」
「妥協するとダメだから、それには気をつけて」
……? 妥協、たとえば1兆円あれば十分だ! みたいなシチュエーションが今後待っているってことだろうか。全く想像ができない
「ダメって……どうなるの?」
「不幸になる。最悪死ぬ」
「死ぬのはちょっと……」
「妥協しなければ大丈夫。……あぁ、増長してもだめ。とにかく"5000兆円欲しい"と思っておけば間違いない。やめておく?」
まぁでも、この占い師に人を呪い殺す力があるなんてことは思えなかった。
「わかった。大丈夫だよ」
「ありがとう。少しだけ待って」
そう言うと、水晶の横にあったメモ帳から1枚切り取り、何かを書きはじめた。何もできない待ち時間というのは暇なものだ。手元の水晶を覗き込んでみる。何か変なものがうつってたりするわけではない。少し歪んだ自分の顔がうっすら見えるだけだ。いったい何を見て、なんの準備をしたというのだろう。そろそろケイの相談も終わったころだろうか……。やっぱりなんとなく薄暗い部屋に巫女服は何か違和感があるなぁ、と思った。全体的な雰囲気はよくできてる気がするのに、本当にもったいない。
「できた」
占い師は1枚の紙を私に突き出した。
「ここに明日行って。そこでちょっとしたゲームをやってもらう。裏側にはその答えが書いてあるから、絶対にそれ通りに押して。そうすれば勝てる。終わった頃にきっと"あなたが欲しいもの"が手に入っているはず」
それを受け取ったけど、暗くてあんまりちゃんとは見えなかった。
「いい? 絶対にその指示通りにしなければダメよ。勝手に動いてはダメ」
「……はい、わかりました」
「もう時間だから。友達も終わったみたい」
そう言われて部屋を追い出されて、私とケイは占い屋さん"Pacifism"を後にした。
ケイも何やら吹っ切れた表情をしていた。
"Pacifism"で占いをした翌日、私はゲームセンターに来ていた。時々プリントシール機で遊んだり、ぬいぐるみを取ったりで寄ったりすることもある場所だ。駅前にある地下1、地上3フロアを占める大きなゲームセンター。なぜここに来たかと言えば、昨日の占い師が指定した場所がここだったから。それも馴染みのあるプライズ機やプリントシール機のある場所ではない。
2階、音楽ゲームのゾーン、ホッケーとかの体験型ゲームのゾーン、そこからさらに1歩進んだ場所にあるレトロなビデオゲーム機のあるエリアを指定されていた。
奥まった薄暗い通路に粗いドットのビデオゲームが横に5台ほど並んでいて、不人気なのかそこで遊んでいる人はいない。
私はその中の1番奥の台に陣取った。そこが指定されていたからだ。
「私でも知ってる格闘ゲーム」ではない、馴染みのない格闘ゲームのデモ画面が表示されていた。そこで、レバーを占い師からもらったメモの通りに動かしていく。上、下、上、上、下、下、下…………。結構な手順を完遂すると、画面が切り替わっていた。
カジノを模した印象のような濃い緑をベースにした背景に、「ゲームスタート」「遊び方」の白いボタンがあった。私は「遊び方」を選んでみた。こんなゲーム知らない。
--------遊び方--------
リアルマネー(と言っても電子マネーだよ!)を賭けられる電子賭博ゲームだよ! ぜーったいに誰にも言わないでね! 誰にも言わなければ大丈夫。多分ね。
簡単なトランプゲーム。1枚表、1枚裏の1組のカードが表示されるから、裏のカードが表のカードより高い(以上)か低い(未満)かを予想するんだ。当たると掛け金が2倍になるよ! 最初は1円からスタートだ! 負けたら0になるけど頑張ってね!
※1番高いのはK、1番低いのはAだよ。
--------遊び方--------
あぁ~なんかそんなミニゲーム、RPGで遊んだことあるかもしれない。どんどん2倍になってくやつ。
ただ、賭博なんて危ない真似、本当だとしたらできない。捕まりたくはない。
(「不幸になる。最悪死ぬ」)
でも、死ぬのも嫌だ。占い師の言葉を思い出した。うーん……占いのこと本気で信じてるわけじゃないけど……死ぬのは嫌だなぁ。仕方ない。「ゲームスタート」を押してみる。最悪、危なくなったら逃げればいい。
【1円支払ってね!】
メッセージと共に2次元バーコードが画面に表示されている。古めかしい懐かしの筐体、1世代も2世代も前のものであろう液晶にその内容はややミスマッチなように感じた。
……まぁ、1円ならいい、そう言ったのは私だ。
私はケータイのアプリを開いて画面のバーコードを読み込んだ。
カキーン! いつも「課金」って言ってるのかなぁって思う、あの小気味いいSEと共に、残高が1円減った旨のメッセージが表示されている。残りは1459円。ワタシはいっぱい入れちゃうと使いすぎちゃうから最低限しか電子マネーに入金しない主義なのだ。
画面左半分には13枚×4組の小さいトランプの画像が、中央左に表のカード、中央右に裏のカード、裏のカードの上下にそれぞれ「HIGH」「LOW」というボタンがある。中央上部には【獲得賞金】と書かれている。今は0らしい。
表のカードは♠の8だった。これより上なのか下なのか……だいたい真ん中だしわかるわけがない。占い師にもらった紙に目を落とすと「1R:H」と書いてある。1回目はHIGHを選べ、ということだろう。
まぁ、これでダメでも別に失うものもない。私は手元のレバーを上に倒して「HIGH」にカーソルを合わせてボタンを押した。
捲られたカードは「♥9」だった。「WIN」という文字が安っぽいアニメーションで降りてくる。
獲得賞金は「2円」になった。左側のトランプの画像からは♠の8と♥の9が消えている。一度選ばれたものは消えるということみたいだ。
「続ける」「やめる」のボタンがあるから、私は「続ける」ボタンを押した。
そこから、私はメモに沿って「HIGH」または「LOW」のボタンを押し続けた。時に「3」表示で「LOW」の指示とかもあって怪しいなぁとか思ったけど、指示通り押し続けたら不思議と負けはなかった。
この時点で12連勝、獲得賞金には「4096円」と記載されていた。
……これはリアルマネーを賭けている、と言っていた。私は気になって電子マネーのアプリを開いてみた。
「5555円」
そこに記載されていた残高だ。マジか……。ゲームを始めた時の残高は1500円弱だったはず。本当に4096円増えているみたいだ。
帰ろうかな……。ここで帰ればこれだけもらえる、ってことでしょ? ギャンブルは引き時が大事だ、って夕方のテレビでトレーダーだかなんだかが言ってたのを思い出す。
(「不幸になる。最悪死ぬ」)
……うーん、でもやっぱり、もう少し続けてみよう。バーコード決済アプリのことはそれなりに信用してるけど、多分きっとこれも何かのトリックに違いない。どうせなら淡々と遊んでみるのが一番丸いだろうし。
そんなこんなで25戦が終わった。なんと本当にメモ通りに操作してるだけで勝ち続けてしまっていた。獲得賞金の表示は勝つ度に2倍され、その数なんと「3355万4432円」さんぜんさんびゃくごじゅうごまんよんせんよんひゃくさんじゅうにえん。普段見るような数字ではないし、自前の所持金としては全くピンと来ない。なのに、手元のバーコード決済アプリの表示も実際にそう変わっていた。
ラストは2枚、捲れているカードは♥のK、残りカードは♥のKと♠の5だけ。つまりLOWで確定だ。
一応手元のメモも見てみる。「26R:L」と書かれていた。それはそうだ。私は「LOW」のボタンを押した。「WIN」の文字が画面上部から流れてくる。獲得賞金は67,108,864円と表示されていた。当たり前に勝てたみたいだ。
WINの文字の下に「やめる」「続ける」のボタンが表示されていた。今やめたら本当に6000万円がもらえるのだろか。手元のアプリを見るにそうらしい。
もう、占いなんて信じなくてもいい気もする。本当に6000万円がもらえるならそれでいいだろう。これが占い師が仕組んだ何かしらの悪ふざけだとして、それに最後まで付き合う義理もあるのだろうか。
そんなことを考えつつも、「続ける」を押していた。6000万円と聞いて現実感を持てもしなかったし。
(「妥協しなければ大丈夫」)
どこまで仕組まれたもので、結局私をどうしたいのか、そんなことも気になりつつあった。
安っぽいカードシャッフルのアニメーションと「デッキコンプリートボーナス7,396,942 」という文字が表示された。獲得賞金は7450万5,806円に変わっている。
画面左側にトランプの画像が復活している。トランプを切り直して再配置した、ということっぽい。
表示されているトランプは♣の4、メモは「27R:H」とある。私は「HIGH」のボタン押し、当たり前のように勝利した。メモは52Rまで記載されている。
予定調和のようにメモ通りに操作して勝てるゲーム、現実感のない数字に変わっていくバーコード決済アプリ、自分は何をしているのだろうか。怪しい占い師に言われた通り律儀に来て、呪いの言葉らしいものに引っ張られて言われた通りに動いていて、ちょっと変な感じかなとか思わなくはない。
とはいえ、予定があるわけでもなかったし、結果新鮮な体験ができているのはそれはそうだ。
本当にそのままお金が増えていたらどうしようか……。そんな心配もうっすら感じながら、51戦目を迎えた。獲得賞金の表示は「1250兆0000億0000万0000円」となっている。
残るカードは♥の4、♦のA、♠のJ、♣のKの4枚。捲れているカードは♥の4、つまり、2/3の確率でHIGHとなる。
メモは「51R:L」と書かれている。普通選ばないものを指定されるというのこういう場面はこれまでも結構あって、なぜだか知らないが勝ててしまっていた。だから今回も勝てるのだろう。
私は「LOW」のボタンを押して、捲れたカードは♦のA、勝ちだ。
獲得賞金の表示は「2500兆0000億0000万0000円」になった。次で5000兆円……ということだ。しかも残りは2枚。メモを見るまでもなく勝利は約束されている。
捲れたカードは♣のK、残っているカードは♠のJ、つまりLOWで勝ち確定だ。
念の為、とメモを見てみる。
「52R:H」
メモにはこう書かれていた。
書き間違いか読み違いか、何度か確認したけれど、やはり書いてあるのは「52R:H」だ。
うーん……? でもこれはLOWで確定だ。メモを見るまでもない、と思う。
そこで占い師の言葉を2つ思い出す。
(「今回言った自分の願い、つまり"5000兆円欲しい"という気持ちを絶対に曲げないでほしい」)
そこまで欲しいわけでもないけれど、この通りにするなら押すボタンは「LOW」だ。
(「いい? 絶対にその指示通りにしなければダメよ。勝手に動いてはダメ」)
逆に、負けが確定しているとしてもこっちの言うことを聞くなら押すボタンは「HIGH」となる。
……矛盾したこと言ってくれちゃって、占い師さんったらもう。どっちを押したらいいのだろうか。これまでメモ通りに淡々と押していたけど、さすがに負けが確定しすぎていてそれ通りに押すのも躊躇われる。
かと言って「勝手に動いたらダメ」という言葉も気にならないわけではない。
2500兆円というわけのわからない額を持っていることになっているバーコード決済アプリのことも気になる。
どうしようか……。一度手を組んで座ったまま背伸びをしてみる。画面に目を落としても状況は変わっていない。
私は5000兆円欲しい! と占い師に言ったけど、それが発端になって、占い師の超常的な何かでそれが実現されたら怖い。ハッキリそう思った。
"あなたが本当に望んでいるなら"確か占い師はそんなことを言った気がするけど、私は別に本気で「5000兆円」が欲しいと思っているわけではなかったのだ。当然だけど。だからちょっとだけリアリティのあるアプリの表示に怖気づいてしまっている。
手に入る可能性がもしかしたらあるかもしれない「LOW」のボタンより、「絶対ダメ」「最悪死ぬ」を回避できそうな「HIGH」のボタンのほうが魅力的に感じられた。
だから私は「HIGH」のボタンを押した。
駅前にある占い屋さん"Pacifism"駅前の地下にあるその占い屋さんで、私は巫女服の占い師と2度目の対面を果たしていた。
「生きて帰ってきたみたいね、良かった」
占い師は私の顔を見るなりそう言った。
「本当に私は死ぬ可能性があった、ってこと?」
「それはそう。私は占い師だもの。見えているものに嘘はつかないわ」
「本当かなぁ……」
そんな超常的な力があってたまるか。でも……。
「ケータイ、どんな細工したって言うの?」
「ふふ。それは企業秘密。でも、何事も起きてないでしょ? もらった個人情報は入館時に書いてもらった誓約書以上のことには使ってないから安心して」
「それ、読んでないし覚えてない……」
確かになんか長ったるい書類にサインした記憶はある。ケイもいたし、一言一句読み込もうとは思っていなかった。
「私は占いに嘘をつかない。だからこそ、嘘をついてここに来る人が許せないの」
占い師は眼鏡の縁に手をやって続ける。
「だから、嘘を言う人にはああやって、本当のことを言ってもらうためのチャンスを与える。嘘を本当だと言いはるような真似したら呪うようにね」
「私があそこで"LOW"を押したら死んでたかもしれない、ってこと……?」
どれくらいが比喩で、どれくらいが真実なのかはわからないけど、私がその場で言った設定に応じた設定のゲームを一晩で準備する執念は本物だと思った。占いに対する姿勢も真摯なのだろう。
だから私は、この子になら、抑えていた本当の望みを言えるような気がした。「5000兆円欲しい」というような、気恥ずかしさを覆うものではない、本当の願いを。
「改めて聞くわ。あなたが欲しいものは何?」
「笑わないで聞いてね」
「ええ」
「昔からずっと、サンタさんに、なりたいの。子供にプレゼントを配って、喜んでもらって、そういう存在に。"欲しいもの"っていうのは、きっと……そういう話ができる友達、かな。あるいは、言いたいことを言えるような、自分への正直さとか、そういう感じのもの」
占い師は私の目を正面から見た。
「……あはははは」
そして笑った。
「笑わないで、って言ったのに」
「ごめんなさいね。でも、それを私に言ったのは正解ね。ケイちゃんは彼氏とこれからよろしくなって、あなたとはあんまり遊ばなくなるもの」
「えええ!? そうなの? いや、それそのものはめでたいけど……。うーん……。寂しいは寂しいなぁ」
「あなたが新しい友だち、ないし素直な自分を取り戻すまで私が付き合うわ。制服見て私は気づいてたけど、同じ学校だしね」
「えええ!? 全然気づかなかった! というか高校生だと思ってなかった!」
「ひどい話ね。まぁ、それまでよろしくねつかさ。特別にこれからの相談料は取らないわ」
「え、いいんですか?」
「"あなたが本当にそれが欲しいと望むなら、その手伝いができる"そう言ったのは私だもの。あなたは自分の嘘を認めたし、私の言うことを聞いてくれた。だから、責任持って力を貸すわ」
新しい友達、そう捉えていいのかな。まだちょっとよくわからないけど、占い師の友達というのも楽しいものな気がする。
「ありがとう! これからよろしくね」
それから、私は占い師--名前は志麻ちゃんということをこの時知った--と連絡先を交換した。
〈了〉
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