死神

2/3
前へ
/20ページ
次へ
都内の路地裏、そこに古いアパートがある。 ドアには鍵など付いておらず、空き巣にとって良物件。 それでも空き巣が入らないのは、住人が一人しかいないからだ。唯一住人が住む部屋には何もない。スッキリとした部屋には、なにもない。 蛇口をひねれば水が飛びだす。 軋む床を踏みながら、洗面台まで向かい顔を洗う。 タオルで顔を吹き、ふと鏡を見る。 なんとも醜い顔が写る。左右瞳の色が違うへんてこな顔が。 右目は白目の部分が黒、黒目の部分が青い。 左目は正常なのに、右目だけが異常。 それを隠すように前髪を下ろし右目を隠す。 自らの影に手を沈め中から小刀を取り出す。 その小刀を抱えながら居間へ移動した。 彼女は影を操る。影に出入りするのは勿論、物や人を出し入れもでき、影から影へ移動することだって可能だ。 そんな能力を持つ彼女は、軋む床を踏み外へ出た。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加