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都内の路地裏、そこに古いアパートがある。
ドアには鍵など付いておらず、空き巣にとって良物件。
それでも空き巣が入らないのは、住人が一人しかいないからだ。唯一住人が住む部屋には何もない。スッキリとした部屋には、なにもない。
蛇口をひねれば水が飛びだす。
軋む床を踏みながら、洗面台まで向かい顔を洗う。
タオルで顔を吹き、ふと鏡を見る。
なんとも醜い顔が写る。左右瞳の色が違うへんてこな顔が。
右目は白目の部分が黒、黒目の部分が青い。
左目は正常なのに、右目だけが異常。
それを隠すように前髪を下ろし右目を隠す。
自らの影に手を沈め中から小刀を取り出す。
その小刀を抱えながら居間へ移動した。
彼女は影を操る。影に出入りするのは勿論、物や人を出し入れもでき、影から影へ移動することだって可能だ。
そんな能力を持つ彼女は、軋む床を踏み外へ出た。
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