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彼女の掃除は一時間続いた
俺の部屋は彼女によって見違える程綺麗になった
掃除を終えた彼女は俺をドキドキさせた
「お風呂借りてもいいですか?」
「あ 左がお風呂です」
風呂
当たり前かもしれないがここに住むという事はそういう事だ
風呂はやばい だって裸だ
スーツケースから色々取り出して準備を終えた彼女はお決まりの台詞を言った
「覗かないでくださいね」
覗きはしない それは勿論だ
だがこんな狭い部屋であんな綺麗な子が薄い扉一枚の先で裸になるなんて
それだけで俺は幸せだ この訳の分からない状況も最早幸せだ
十分程で彼女が風呂から出てきた 風呂上がりの彼女はさらに綺麗だった
心臓のドキドキが止まらない
「俺も入ろうかな」
そう言って俺は風呂場に入った つい先ほどまで彼女がいた風呂場に俺は緊張した もう三年は毎日使ってきた場所なのにこんなにドキドキするとは 美人の破壊力凄まじいな 俺はそんな事を考えながらシャワーを浴びた
「お前は顔だけで選ぶからダメなんだよ」
ふと「あいつ」の言葉が俺の中で再生された
「女はな 愛嬌だぜ 愛嬌 中身ブスの女とかいくら顔よくてもダメだから」
そう言うあいつは毎月のように女子から告白されていた
けど あいつは誰とも付き合わなかった
「女はいらねぇよ 俺にはお前がいるからな」
あいつはそう言って笑った 俺は嬉しかった
俺が風呂から上がると彼女は俺のベットで横になっていた
「私はここで寝ます おやすみなさい」
そう言って彼女は壁の方を向いた
理不尽極まりないが美人だから許すしかない
「だからお前はダメなんだよ」
あいつの言葉が木霊した
電気を消し 俺はソファで寝る事にした 携帯を見ると時間は22時前だった いつも日付が変わってから寝る俺は全然眠くなかった 俺は天井を見つめた
高い天井を見つめながら俺はあいつ 伊野星弥の事を考えていた
俺たちは中学で出会った 同じクラスで席が隣だった
大企業伊野グループ会長の御曹司だと言う星弥は第一印象から違った
綺麗な顔立ち 堂々とした態度 自信に満ち溢れた声 会った時は仲良くなれる氣が全くしなかった
でも俺たちは親友になった
きっかけは漫画のONE PIECEだった 授業中俺が隠れてONE PIECEを読んでいると星弥が話しかけてきた
「それ面白いの?」
「面白いよ 読む?」
その時俺が読んでいたのは七巻だったが星弥はONE PIECEにどハマりした
「すげぇこの漫画 俺漫画で泣いたの初めてだぜ」
「わかるか これがONE PIECEだ」
俺は作者でもないのに自慢した
それから俺たちは一緒にいるようになった
バカなことも 恥ずかしいことも一緒にした 俺の青春すべてが星弥と共にあった
星弥の事を考えているといつの間にか俺は眠っていた
無二の親友、まぶだち
どの言葉でも俺たちには足りなかった
だから俺たちは互いを「俺の半分」と呼んだ
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