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 こんな風にして、僕は美由紀との思い出のイメージを、できるだけ 3D 化して「彼女」に入力することにした。彼女が写っている写真や動画も片っ端から入力した。写真や動画から 3D データを起こす技術は年々進歩している。それを組み込むことによって、わざわざ僕が3D化しなくても、勝手にシステムの方で3Dにしてくれるようになった。  さらに、これによって「彼女」は自分自身の映像を作れるようになったのだ。画面にCGで作成された美由紀の顔が表示され、声に合わせてリップアニメーションする。亡くなった当時の姿から、懐かしい学生時代の姿まで、自由自在。そして、学習が進むにつれ、そのリアルさは高まっていった。もちろん「彼女」の器であるホームサーバも、ハードウェアの進歩に応じて僕は部品単位でアップグレードを続けていた。  加えて僕は、「彼女」のプログラムに、遺伝的アルゴリズムに基づいた「最適化(オプティマイゼーション)」を行うように修正を施した。同じ結果を導くにしても、常に最も効率のいい手法を模索するようにしたのだ。これによって再現度や実行速度といったパフォーマンスが格段に向上した。  だけど……  「彼女」が誕生してから、既に十年。それなのに、いつになっても僕は満足できなかった。  やはり、「彼女」は本物の美由紀とは違う。
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