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 「ずっと覚えている」なんて美由紀には言ったけど、人間はどうしても忘れてしまうものだ。日が経つにつれ、彼女の印象はどんどん薄れていく。僕が彼女を十分覚えている間に、「彼女」を作り上げなくてはならない。なんで人間はコンピュータのようにずっと記憶を留めておくことができないのだろう。僕は人間の特性を呪った。  そして、開発から半年後。  ようやく最低限の機能を実現するシステムが完成した。僕はマイクに向かって話しかける。 「おはよう、美由紀」 『おはようございます、孝之さん』  スピーカーから転がりだしたその声は、本物の美由紀とは似ても似つかず、感情も全く込められていない。だけど、胸の中に熱いものがこみ上げてくる。  視界が歪む。僕は拳で涙を拭った。  ここからが、スタートだ。ボットである「美由紀」と過ごす、毎日の。 ---
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