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街中はもう半袖日和の日が続いているけれど、浜辺は海風が涼しくて、
半袖のワンピースにはちょっと羽織ものが欲しい程度。
こんな時、昔のあなたなら、自分の上着を1枚脱いで私の肩にかけて
くれたりしたかもね。
今は、子供のようなあなたを心配して、あなたの分の上着だけは、
ちゃんと用意してきたわ。
私たちは、昔みたいに走り回るでもなく、砂に少し足をとられながら、
ゆっくり並んで歩いた。
「寒くなぁい?」
私が尋ねると、困ったように小首をかしげるあなた。
私は黙って、用意していた薄手のブルゾンを肩にかけてあげる。
「…どなたか存じませんが、ご親切にありがとうございます」
私の方に向き直り、深々と頭を下げるあなた。
耐え切れず、その場にしゃがみ込んだ私の目からは、涙が溢れて
止まらなかった。
両手ですくい上げた砂は、指の隙間からサラサラとこぼれ落ちていった。
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