二話「中古車のカーナビ」

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  「およそ六十メートル先、目的地です」  車は動いていないのに、目的地が近づいて来る。  何か……何か得体の知れないものが、この車に近づいて来ている。  誰もがそう理解して、車内は恐怖でパニック状態だった。 「おい、さっさと車をバックさせろ!」 「で、でも……」 「逃げるんだよ!」  俺は、運転席の後輩に向かってそう叫んだ。  このままここにいたら、確実にまずいことになる。  何故だかそんな予感がして、とにかく逃げなければ、と躍起になっていた。 「およそ五十メートル先、目的地です」  無機質な声と共に、車は猛スピードでバックした。  舗装もされていない道のせいで、車が跳ねるように揺れる。  頭をぶつけそうになったが、運転手に文句を言うような余裕はない。  少しでも話そうとすれば舌を噛む。  アスファルトで舗装された道に出た時には、カーナビは沈黙していたが……車をUターンさせ、俺たちはすぐに山を出た。  ……ユニバ?  それどころじゃないって。  マジで怖かったんだ。  とにかく近場の町に行って、落ち着くために適当なコンビニに入ったんだ。  あの時ほど、名前も知らない他人の存在に安心したことはないぜ。  もしもあの時、あのまま近づいて来る何かを待っていたら……俺たちはどうなっていたんだろうな?  そうそう、後輩だけど。未だにあの中古車に乗ってるよ。  流石に、お祓いはしたみたいだけどな。  
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