三話「占いにハマった友達」

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   占い師は紫の服を着て、頭に同じ色の布を被って、口元も布で隠してた。  なんていうか、意志の強そうな目だけがアタシたちを見ててさ、その視線といかにも占い師! って雰囲気に、ちょっと緊張したのを覚えてる。 「お掛け下さい」  そう言って、占い師はアタシたちを椅子に誘導した。  アタシとA子は並んで座って、占い師と小さな机を挟んで向き合う。  机の上には、漫画でしか見たことないような大きな水晶玉が置いてあった。 「初めてのお客様ですね?」  占い師の問いかけに、私たちは返事をする。  私とA子を値踏みするみたいに交互に見て、それから占い師は言葉を続けた。 「では、まずそちらのお嬢さんから……。お名前は?」 「A子です」 「A子さん、何を知りたいのかしら?」 「私たち、アナタの噂を聞いて、本当に当たるのか確かめに来たんです」  もうさ、ビックリしたよ。  だって、本人を目の前にしてそんなこと言う? そりゃ事実だけどさぁ。  曲がりなりにも、ちゃんと占って貰いたいことを決めてるんだって思ってたから。  A子がそんなど直球なこと聞くと思ってなかったんだよね。 「そうですか。では、アナタの未来を少し見てみましょうか」  A子みたいな客に慣れてるのか、占い師は動じずに水晶玉に両手をかざしたよ。  何か映るのかと思って、アタシたちも水晶玉をジッと見てたんだけど、結局よく分かんなかった。 「アナタは学校帰りに、必ずF社のコンビニに立ち寄りますね?」 「……はい」 「今日は、絶対にそのコンビニに行ってはいけません」 「行ったらどうなるんですか?」 「酷い怪我をすることになるでしょう」  アタシはこの時点で、A子が学校帰りにコンビニに寄ることを当てた占い師に驚いた。 「そちらのお嬢さん。アナタのお家に、何か悪い虫が入り込んでいるようです。ご両親の仲が悪くなったのも、そのせいでしょう」 「えっ」  驚きすぎて、思わず声が出ちゃったんだよね。  だって、アタシはこの人に何も話してないんだもん。  それなのに、うちの親のことを当てられちゃったんだよ? 「このシールをリビングの机の裏に貼って下さい。そうすれば、虫はいなくなりますから」  そう言って渡されたのは、小指の爪くらいの大きさの、花びらの形をしたシールだった。  半信半疑だったけど、アタシは無くさないようにしっかりシールを財布の中にしまった。  
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