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これは、俺が大学生の時の話だ。
その年、サークルの後輩が車を買った。
中古車で異様に安かったとかで、後輩は嬉々としていたんだが……。
その時点で、何かがおかしいと思うべきだったんだよな。
「俺、運転するんで! 今年の夏はみんなでユニバ行きましょうよ!」
後輩はかなり浮かれた様子で、俺たちに言う。
サークルメンバーの何人かも乗り気で、俺と後輩を含めた五人が、夏休みにユニバに遊びに行くことになった。
この五人の内訳は、男三人に女二人。
正直俺は、夏休みはバイト漬けにして金を稼ごうと思っていたから、行く気はなかったんだが……。
後輩と仲が良かったばっかりに、半強制的に参加が決まっていた。
当日、予定通りの時刻に、普段から重用しているファミレスに集まった俺たち四人。
軽食を取っていたところ、少し遅れて後輩が顔を出した。
「すみません、道が混んでて」
どこか浮かれた様子で言って、後輩が後ろ頭をかく。
車を言い訳に使えることも嬉しかったんだろう。
俺たちは残った食事を片付けて、ファミレスを出た。
この時、初めて後輩の車を見たんだが……中古車とは思えないくらい綺麗だった。
古い車種でもなさそうだし、車内も新品同然で、カーナビまで付いている。
どうしてこの車が、破格の値段で売っていたのか?
思わず首を傾げる程度には謎だった。
「そんじゃ行きましょ! あ、先輩は助手席で」
「なんでだよ」
「だって、他の人だと緊張するじゃないっすか!」
「俺だと緊張しねぇのかよ」
まぁ、そんな会話をしながら出発したわけだ。
初めのうちは、順調に進んでたよ。
高速乗って、パーキングエリアでトイレ休憩して。
ユニバまでの道筋は、カーナビが教えてくれてたし。
後輩も俺たちも、案内に従ってりゃそのうち着くだろうって思ってたんだよ。
けどさ、途中で高速を降りろって指示されたんだよな。
「おい、コレ道合ってんのか?」
「さぁ? 分かんねっす。けど、なんか抜け道とかあるんじゃないっすか?」
俺は助手席に座っていたし、後輩がしっかり目的地をユニバに設定していたのも見た。
だから、そんなもんかと思って、それ以上の口出しはしなかったんだよ。
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