逃げる

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オレは白い粉で目をやられたらしく、周りの様子は分からないが、ただ群衆の盛り上がる声だけが聞こえた。 ---オレ、やられたのか…? 呆然とその場に立ち尽くすオレ。 オレの今まではなんだったんだ? ---もうオレの足、一歩も動かねえや。 緊張の糸が切れたのか、立ち尽くすオレの頬に、暖かいものが溢れた。 すると、それまで喧騒に包まれていた一帯に、再び静寂が訪れた。 そして次に聞こえてきたのは、 「こっちだ」 「もうちょっとだ」 と、手を叩きながらオレを励ます組の仲間達の声。 へへっ、どうやらこんな負け犬でも、暖かく迎えてくれる奇特なやつらがいるもんだ。 オレはその声に導かれるかのごとく、一歩一歩、まるで地面の感触を確かめるように歩き始めた。 ------------------ 『ゴーーール!紅組、5年生の山田くん、障害物競走、無事ゴールしました。 網くぐり、平均台、風船破りまではダントツのトップだったのに、最後の飴くい競争でまさかの最下位転落。 “飴は甘かったけど、勝負は甘くなかった…” そんなところでしょうか。 それでも頑張って最後泣きながらゴールした山田くんに盛大な拍手をっ!』 うるせーよ。 終わり
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