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「パーン」
耳をつんざくような大きな銃声。
一瞬の静寂の後、群衆は蜂の巣を突いたかのような大騒ぎになった。
あたりに漂う硝煙の臭い。
実はオレもキライじゃない。
だが俺には立ち止まっている暇はない。
次の発砲のために玉を込め、銃を構えるガタイのいい男から逃げるように、オレは走った。
無我夢中で走った。
全力で走った。
そのおかげかオレは誰にも追い付かれることなく、ここまでやってきた。
ここまでの道中には、いろんな妨害が待ち構えていた。
銃を持つガタイのいい男の手下達なのだろう。
奴らはオレのいく手を阻もうとしやがるのだ。
だがオレは、そのさまざまな妨害を必死に乗り越えてきた。
オレを捕らえようと放たれた網を掻い潜り、またある時は、足を踏み外すと一気に奈落に転落してしまいそうな細くて頼りない道も、立ち止まることなく走って逃げた。
オレは常に必死だった。
時にはヤバいこともやったさ。
公衆の面前で騒ぎを起こすかのように、過大に摂取すると人体にも危険な影響を及ぼす気体をパンパンに充填したブツを、大きな音とともに破裂させて群衆の度肝を抜いたこともあったな。
あれは痛快だった。
ふと振り返ると、追手は遥か後方になっていた。あの奈落に落ちた奴もいるらしく、さながら阿鼻叫喚の様相を呈していた。
ここまで来れば逃げ切ったも同然だ。
だがそうは問屋が卸さないとばかりに、次の妨害工作が現れた。
ガタイのいい男の手下がオレの前に立ち塞がり、取引を持ちかけてきた。
といっても奴は無言だ。
無言で、取引の内容の書かれたカードを示した。
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