わたしは忘れない

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わたしは忘れない

 旧校舎から離れ、わたしは教室で泣いていた。 「だから、止めとけって言ったのに」  高遠がよれよれのタオルを、わたしに差し出した。うっすら黒ずんでるタオルに使う気にはなれず、自分のハンカチを取り出す。 「高遠はもうわかっていたんでしょ?」 「いろいろ調べたからね。でもカミチカが自分で気づかないと意味ないだろ?」  悔しいけど、その通りだと思った。 「ふたりを責めることなく、応援したのはちょっとだけ感動したよ。かっこよかったぜ?」  高遠なりのなぐさめの言葉らしい。 「なんとか解決したことだし。チケットくれよ。楽しみにしてるんだ」  こいつはコレしか言わない。本当にどうしようもないやつだ。 「明日もってくるよ」 「今度の日曜日でいいよ。映画のチケットはペアだろ? なら俺と一緒に行こうぜ。気晴らしにさ」  にかっと笑った高遠の顔が、なんだかまぶしく思える。泣きすぎて、おかしくなったのだろうか?   「ちょっと考えてあげる」 「うん、ゆっくり考えて」  おどけたように笑う高遠の顔がおかしくて、わたしはまた泣いた。    わたしはもう忘れることはないだろう。  辛い失恋の記憶と、それを乗り越えた経験を。  今はまだ辛いけど、きっと良い思い出になる。そう信じたい。  そのためにも今日はいっぱい泣いて、明日から笑顔で学校に来よう。         了  
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