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今日は「洋介んちで飲もうぜ」と二人が言い出した。
二人とは、中学のサッカー部からの付き合いで、大学に入って二年経った今も同じフットサルチームに入っている。
一人はイケメンで俺達三人の中では落ち着いた仕切り屋の勇人。もう一人は小柄でムードメーカーだけど臆病な智哉。そして二人が俺の事を「洋介は鈍感でどんくさっ!」と言う。
梅雨明けの公園。街灯が疎らで季節毎にしか手入れされていない植栽の間の道は、夜中に歩いている人は殆どいない。
昼間の熱を放出しきれない、蒸し暑い街中のアスファルトの道で車の音を聞きながら歩くより、虫の鳴き声を聞きながら歩ける道を選んで俺の家に向かっていた。
他愛もない話をしながら歩いていると……。
「なぁ、あの小さな女の子何してんだ?こんな夜中に……それも一人で」
俺は両脇を歩く勇人の右手と智哉の左手を掴んで二人の意識を女の子に向けた。
「声かけてみる?迷子かも」
俺が二人に提案するも、怖がられるよ、騒がれたらやばいよとか言って、でも心配気にその子を見ている。
「じゃぁ、俺が聞いてみるからお前ら待っとけ」
俺は女の子が怖がらない様に、大きな声を出さなくても聞こえる距離まで近づき、しゃがんで話しかけた。
「ねえ、何してるの?お母さんかお父さんは?」
艶やかな長い黒髪に囲われた真っ白な肌にまん丸の目をして俺を見て、怖がる事なく。
「探してんの」
「何を?」
「帽子、お父さんに買ってもらったの。お母さんと一緒に会いに行くのに被って行きたいのに無いの」
体の大きさの割にはたどたどしい話し方だが言いたい事はわかった。
「一緒に探してあげようか?僕の友達もいるから……で、どんな帽子?」
「ともだち?」その子は不思議そうに首を傾げた。そして続けた。
「うさぎが着いた麦の帽子」
「わかった、じゃあ探そう!」
女の子はニコッと笑い頷いた。
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