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見つかった麦わら帽子を持ちアパートに向かう。
「俺、本当にあると思わなかった」
勇人が言うと「俺も」と智哉も言っている。
「そうだったの?何で?」
不思議に思い二人に聞くも返事は無く、アパートの錆びた階段を無言で登って行く。俺は不思議に感じながら、まほちゃんの部屋の前に着きドアノブに帽子を掛けようとした。
その時、隣の部屋から60歳過ぎ位だろうか、白髪で無造作に髪を束ねよれた感じの部屋着に変色したクロックス擬きを履いた女性が出て来た。
「あんた達、米田さんの知り合い?」
「いえ、まほちゃんの探し物を届けに来ました」
俺が答えると、その女性は不思議そうに。
「あの子供はまほって名前だったんだ」
「さっきそう言ってましたが……」
「はぁ~っ?あんたら何言ってんの?そこの住人は10日前に死んだよ!ってか死んでるのが見つかったんだよ!」
その女性に言い返そうと部屋を指差しながら。
「えっ?だって電気が……えっ?点いてない……」
俺は何が何だか解らず愕然としていると。勇人と智哉が俺の腕を掴み行くぞと言っている。
俺は理解が追い付かず、その女性に聞いた。
「死んでいたってどういう事ですか?」
「何か臭いが酷くて大家に言ったんだよ、それからは大家と警察で何かやってたけど、米田って言う女と子供が死んでたって。無理心中みたいだよ。でもね、私は隣に住んでたけど子供がいるなんて知らなかったんだよ。見た事ないしね、そしたら届け出されてない子供だったんだと!生活苦だったんだかね?一度だけ男の声は聞こえた事あったけど、それが父親だったのかね?大家の話しだと、その男も別の場所で死んでたと……」
俺はその話を聞いても訳が解らなかった。
「洋介行くぞ!」
あまりの衝撃で力なく立っていた俺は、二人に引っ張られアパートを後にした。
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