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「わざと?」勇人が返して来た。
「あぁ、わざと…俺達に会わす為に……」
「そうかもな…」智哉が呟いた。
「あぁ……それでね俺、その子達を救う仕事に進もうかと思ってんだ」
「えっ?」また二人は驚いている。
「居場所を探している子達の手伝いってか……」
「麦わら帽子みたいに?」勇人が言う。
「そう、子供達の居場所探し。俺もこれからの自分の居場所探していたから、まほちゃんが教えてくれた」
智哉が空を見上げながら話し出した。
「あん時は怖いしかなかったけど、今考えるとまほちゃんて可愛かったよな」
その時、池からポチャンと音がした。
振り反ると、あの麦わら帽子が浮かんでいる。
俺達は一瞬固まった。
智哉が池に向かって聞いている。
「まほちゃん?」
その時わずかな風が吹き、少し波立った水面に麦わら帽子のつばが片方だけちょこんと潜って直ぐにもどった。
俺達はわかった。
まほちゃんがそこにいる。
そしてあの時みたいに黙って頷いているんだと……。
了
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