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2話 盗賊、桃太郎
東の都が鬼の大群によって滅ぼされたその頃、桃太郎とその一行は幼き鬼の少女を麻袋に閉じ込めたまま、夜道を馬で移動していた。
「あー、危ねぇ危ねぇ!もう少し逃げるのが遅れてたら間違いなくやられてたなぁ‼︎」
「わははは!あっしの[鼻]は伊達ではありませんぜ?桃太郎の旦那!」
「フン!あたいだって木に登って遠くの様子を見てすぐ降りてから伝えてんだから、あんただけの手柄じゃないさね!」
「小生(しょうせい)は追手である鬼一人の目玉を二つ、こうして奪って来ておりますぞ?ほほほ!」
「犬崎(いぬざき)、猿親(さるちか)、雉殿(きじとの)…よくやったなお前ら!鬼どもの瞳は今じゃ、国中のお代官様達が欲しがってる代物だ。
[幸運を呼ぶ白き瞳]と呼ばれ始めてからいつもぼろもうけだぜ‼︎」
桃太郎達が初めて鬼ヶ島で鬼討伐を果たした際、彼らが蓄えていた食糧と価値のある資源…更に討伐した証として、白い瞳がとても魅力的に思えた鬼達の目玉を遺体から抉り取っていたのだ!
東にある都に陣を構えていた大名の元へと帰還した後、鬼の目玉を献上した彼らはそれが高値で売れた事を非常に喜んだ。
「このガキの目玉もほじくり出してから、後でゆっくりと殺して売っぱらおうぜ。
割とこいつらの肉や骨も売れるみたいだしよぉ!」
「わははは!相変わらず人間とは思えねぇくらいに[鬼畜]なお人ですなぁ、桃太郎の旦那は。まぁあっしは[鬼の血を飲んだ犬]ですし人様の考えなんてもう知ったこっちゃねぇんですがね?」
「あたいもそこは同感だねぇ!」
「小生も右に同じくですな。我らはもはや鬼の肉を喰らい血をすすり続け最強の種となったわけですから!」
そう…彼らは鬼の血肉を糧にして暮らしてきた為、一般の兵士が束になっても倒すのが困難なほどに強くなってしまっていたのだ。
「ははは!良いじゃねぇか。強い奴が支配するのがこの世の性なんだし、弱ぇ奴をどう使おうが俺達の勝手だからなにしたって良いんだよ!」
「わははは!さようですね。…して桃太郎様、今向かっておられるのは貴方様の親にあたる祖父母様方がおられる所ですかな?」
「ん?あ〜〜……ジジババの所かぁ。本当は行きたくねぇんだがな?良い面を一応作って見せておかねぇと、大丈夫かどうか心配だと言いながら俺らの場所を探して回りそうだし、行くしかねぇだろ。」
「ふむ、そこに関してだけは親想いでありますな。小生もそれが無難かと存じますぞ…」
雉殿が作り笑顔で桃太郎の考えを後押しするなか、犬崎と猿親はふと桃太郎から目を背け渋い顔を隠せきれずにいた。
実は内心、雉殿も嫌な表情を出さまいと必死に耐えていたのである。
そうしなければ、自分達が桃太郎の手によって殺されてしまうから…
「ん〜〜!ん〜〜‼︎」
袋の中に閉じ込められていた鬼の子供が目を覚ましたのか、口を何かで塞がれていながらも必死に助けを求めている。
桃太郎はその事に苛立ち、麻袋を片手で掴んで地面にその子を打ちつけた!
「んぐっ‼︎……︎んっ⁉︎」
二回ほど頭を地面に打ちつけられたショックで、再び意識を失ってしまった鬼の子供。
「も、桃太郎様!この子は一応献上品として売り渡す為のもんですよ?傷ものにしたら安値しかならないさね!」
「…ちっ、わーってるよ。だがどっちにしてもこのガキの目玉を抜き取ってからの話だし、死体となったこいつを素材代わりに引き取りたがる闇市場の連中もいるんだ。いざとなったらそっちに渡しゃいいだろ?」
「………」
そう、鬼の子供・沙羅は非情な人間達に売り飛ばされるために誘拐されてしまったのだ!
彼女の運命やいかに……
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